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勝負師の小池都知事が練った「三段跳び」戦略

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9/27(水) 20:38配信

東洋経済オンライン

「希望の党」結党集会で多くの政党からの離党者を引き連れて拳を突き上げる小池百合子代表(写真:つのだよしお/アフロ)

 安倍晋三首相が名付けた「国難突破」解散を前に、永田町では小池百合子都知事による旋風が吹き荒れている。小池氏が、25日夕の首相解散表明会見の3時間半前の緊急会見で、自らが代表となる国政新党「希望の党」の結党を高らかに宣言して以来、解散政局の主導権は首相から小池氏に移ったからだ。

【写真】小池都知事の「トリックスター」ぶりは小泉元首相を彷彿とさせる

 まさに“勝負師・小池”の面目躍如で、解散前日の27日午前の「希望の党」結党会見では、自民、民進両党からの離党議員など14人を従え、「寛容な改革の精神に燃えた保守」を旗印に「日本をリセットする」と首相を頂点とする巨大与党の打倒を目標に掲げて、拳を突き上げた。

 昨夏の都知事選での熱狂を再現したような“小池フィーバー”に、本来なら「反自民・反安倍」勢力の先頭に立つべき野党第1党・民進党の右往左往が際立った。野党結集を目指す前原誠司代表は26日に小沢一郎自由党代表や連合の神津里季生会長とあわただしく協議する一方、小池氏とも「極秘会談」した。民進党内には小池新党との合流を目指す「発展的解党論」を唱える議員も相次ぎ、選挙前の共産党を除く野党結集も一気に現実味を帯びた。

 「虚を突いた」はずの首相の冒頭解散が「小池氏の闘志に火をつけた」(自民幹部)格好で、これから3週間余の選挙戦の主役も小池氏となりそうだ。小池氏の土壇場での衆院選出馬説も消えていないが、“解散狂騒曲”の裏側では「小池氏の本当の狙いはポスト安倍での初の女性首相だ」(自民若手)との声も広がる。政界では、「小池氏の基本戦略は東京五輪後の国政復帰によって首相を狙う“三段跳び”」(首相経験者)とみる向きが多い。

■党名は登録済み、公式動画も1カ月前から準備

 27日午前9時半から都庁近くのホテルで開催された「希望の党」結党会見は、小池氏のワンマンショーだった。冒頭に「さらば しがらみ政治」をタイトルとする希望の党の公式動画が会場のスクリーンに映し出され、それに合わせての小池氏の登場を、壇上に居並ぶ参加議員が起立して出迎えた。

 サーモンピンクのスーツに黄緑のインナーとスカーフといういでたちの小池氏はマイクを握ると「しがらみがないからリセットできる。しがらみのない政治、大胆な改革を築く」と結党の理由を述べるとともに、有権者にアピールする新党の理念については「改革のベースにあるのは伝統や文化、日本のこころを守る保守の精神だ。寛容な改革の精神に燃えた新しい政党だ」と声を張り上げた。

公式動画は、暗いトンネルに靴音を響かせながら光のみえる出口に向かうグリーンのスーツに白いハイヒールの女性の後ろ姿をカメラが追う。両側から「歯向かう気か」「組織をなめるな」などの字幕とともににらみつける男たちをかき分けて女性が光の中に踏み出すと、画面いっぱいに「希望の党」の文字が広がる。小池氏側近の若狭勝衆院議員は「私が1か月前からつくり始めた」と語るが、出来栄えも含め「企画演出は小池氏に間違いない」(自民幹部)とみられている。

 さらに、「希望の党」という名称についても、小池氏自身が今年2月に商標登録を出願し、9月1日に登録されたとの経緯も明らかになった。小池氏は「首相が冒頭解散に打って出ることを、改革実現のチャンスととらえた」と語ったが、動画作成も含め、解散風が吹く前から新党結党の準備を進めていたことを裏付けた。この点について小池氏は「様々な事態を想定しないのは政治家ではない」と不敵な笑みを浮かべた。

 結党会見には、若狭氏とともに新党旗揚げ準備を進めてきた細野豪志元環境相に加え、松原仁元国家公安委員長、長島昭久元防衛副大臣ら民進党離党組に、自民党を離党して馳せ参じた福田峰之前内閣府副大臣、「日本のこころ」を離党した中山恭子元拉致担当相らを加えた14人(うち女性2人)が参加し、それぞれ決意と抱負を述べた。

■小池氏退場後は“小池チルドレン”の集会に

 ただ、代表としての記者会見後、都知事の政務のため小池氏が途中退席すると会場は一気に緊張感とざわめきを失った。壇上で小池氏の両脇を固めた若狭、細野両氏も含め、会場に残った面々は閣僚経験者も含めて「王者の牡ライオンが去ったあとの牝ライオンや子ライオンの集まりにもみえた」(参加記者)という。まさに現職議員たちも「小池チルドレン」の風情だったわけだ。

 小池氏は「東京だけでなく全国的に候補者を擁立する」としており、名古屋や大阪、さらには福岡など各大都市の小選挙区に公認候補を立てることで、比例票の獲得も狙う戦略だ。その一方で前原氏との会談では民進党との連携も話し合い、「野党の結集が必要」との認識で一致し、共産党などのいわゆる革新勢力を除く野党勢力の結集を目指すことを確認したとされる。

 野党が一つになって選挙を戦う、いわゆる「オリーブの木」を持論とする小沢一郎氏の率いる自由党や社民党も含めた統一候補の擁立に向け、前原氏が希望の党との合流を28日の解散に合わせて民進党両院議員総会で諮る案も急浮上した。

 前原氏は27日夜、「どんな手段を使ってでも安倍政権を終わらせる。野党がバラバラでは選挙は勝てない」と語った。これに関連して前原氏周辺は「前原代表は衆院選に無所属で出馬する」との見通しを示した。これは、民進党を事実上解党して希望の党になだれ込み、同党主導で共産党を除く「野党統一候補」を各小選挙区に擁立して安倍政権打倒を狙うという「捨て身の作戦」(前原氏周辺)だ。ただ、民進党の組合出身者を軸とするリベラルグループは、共産党との選挙共闘を求めているだけに、党内調整が難航し、28日の解散後に分党や解党をめぐって党内が大混乱に陥る可能性も少なくない。

 こうした選挙協力をめぐる野党再編の動きは小池氏の新党結党宣言に触発されたもので、まさに野党全体が「小池劇場」に巻き込まれた格好だ。解散後も「なんでもありの状況」(自由党幹部)が公示日直前まで続きそうだ。

 いずれにしても小池氏が主役に躍り出たことで、選挙戦の構図も一変しつつある。橋下徹前大阪市長が立ち上げた大阪維新の会は国政選挙に挑戦して関西を中心に54議席を獲得しただけに、首都東京を制した小池氏が旗揚げした希望の党は、単独で戦っても「40~50議席は確実」との見方が多い。ただ、「新たな保守政党として自民党の議席を奪うのか、政権の受け皿として民進党など反自民勢力の議席を奪うのかは見極めにくい」(公明党幹部)のも事実だ。だからこそ選挙結果が出るまで小池氏の“独り舞台”が続く可能性も大きく、まさに「メディア戦略の天才」が選挙戦をかき回すことになる。

■首相挑戦は「神の思し召しがあれば…」

 そうした中で注目されるのが小池氏の「最終的目標」だ。結党宣言後の民放テレビのインタビューで「将来、首相を目指すのか」と聞かれた小池氏は得意のアラビア語で「神の思し召しがあれば…」と煙に巻いた。自民党総裁選に女性として初めて出馬して敗北した際、「次はうまくやるわ」と不敵な笑みを見せた小池氏だけに、政界でも「女性初の首相を狙っているのは間違いない」(自民幹部)との見方が支配的だ。

 都知事選で圧勝した小池氏はその後の米大統領選でヒラリー・クリントン元国務長官がトランプ現大統領に敗れた際、「アメリカでもガラスの天井が厚いのね」と嘆息する一方で「ヒラリーさんは69歳なのよね」と漏らしたという。今年7月に65歳になった小池氏にとって、「首相に挑むための時間が残り少ない」(自民長老)のは事実だ。だからこそ、小池氏が結党会見で否定した「都知事を辞任しての衆院選出馬説」についても、「野党結集による政権交代時の首相候補に、と口説かれれば、土壇場で出馬するのでは」(自民幹部)との噂が消えない。

 ただ、それに伴う都知事選を衆院選とのダブル選とすることは手続き上困難とされるうえ、後継候補もまったく見当たらない。さらに都民からみても「300万票近くの支持への裏切り行為」(公明党幹部)だけに、「身勝手な変身との批判を招き、“小池神話”が崩壊して希望の党の票も減らしかねない」(民進党幹部)との指摘もある。

■2020年秋以降の次回衆院選が最後のチャンス

 となれば、小池氏の国政復帰は次回衆院選となる可能性が大きい。今回首相が冒頭解散に踏み切ったことで、「次回衆院選は東京五輪開催後の20年秋以降になる可能性が高い」(自民幹部)とされ、小池氏にとって「その時こそが、国政に復帰して首相を狙う最後のチャンス」(同)となるわけだ。

 今回衆院選での小池新党による挑戦は、三段跳びにたとえれば首相を目指す第1歩の「ホップ」。衆院選での希望の党の大躍進が「ステップ」となり、次の衆院選での国政復帰を「ジャンプ」として一気に首相の座を狙う、というのが小池氏が描く“国盗り戦略”とみる向きが多い。

 ただ、3年後の東京五輪まで都知事と党首の「二足の草鞋」を履き続けることによって、都政運営が少しでもおろそかになれば、「その時点で小池劇場には閑古鳥が鳴く」(首相経験者)ことは避けられない。今回の選挙戦で「選挙にはかかわるつもりはないが、原発ゼロは応援する」と語った小泉純一郎元首相の政局運営を真似した“トリックスター”ともいわれる小池氏だけに、政界では「選挙が終われば早晩、賞味期限切れとなり、首相に挑戦するチャンスもなくなる」(同)との見方も少なくない。

泉 宏 :政治ジャーナリスト


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