毎日新聞2017年9月21日 東京朝刊
【ニューヨーク國枝すみれ】核兵器の使用などを史上初めて禁止する核兵器禁止条約の署名式が20日、ニューヨークの国連本部で開かれ、国連関係者によると、42カ国が署名した。初日だけでブラジルや南アフリカなど非核保有国51カ国の代表が署名する見通しで、条約は発効に向けて大きな一歩を踏み出す。
今年7月に122カ国が賛成し採択された禁止条約は、署名後に国内手続きを経て批准した国が50カ国に達した日から、90日後に発効する。国連のグテレス事務総長は式典で「核兵器なき世界という目標に向けた重要な一歩」と発言。一方で核保有国が反対する現状も踏まえ、「核兵器廃絶に向けた厳しい道を歩み続けなければ」と訴えた。また「広島と長崎の被爆者の証言が交渉会議に力を与えた」と述べ、被爆者をたたえた。
式典には、田上富久・長崎市長や、朝長万左男・日赤長崎原爆病院名誉院長、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳代表委員らが出席。田上市長は「大きな前進の日。無駄にしてはいけない」と話した。被爆者運動を先導した谷口稜曄(すみてる)さんと元長崎大学長の土山秀夫さんの遺影も式典会場に持ち込まれた。
核兵器禁止条約は核兵器の使用や使用の威嚇、貯蔵、開発などを幅広く禁止。広島、長崎の被爆者や核実験被害者の「受け入れがたい苦しみに留意する」との文言も盛りこまれている。
米国やロシアなど核保有国は条約制定に向けた交渉会議すらボイコットした。米国の「核の傘」に依存する同盟国の日本や韓国、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の多くも同様だ。