オークランドでのベーシック・インカム実験、タダ金は人々をどう変えるのか
オンラインメディアや本について書いているオランダ在住者のブログ
2016/6/1 オンラインメディア, 気になるニューステック系スタートアップのインキュベーターとして有名な、アメリカのY Combinatorが計画している、ベーシックインカムに関する実験第一弾がオークランドでまもなく始まります。
選考で選ばれた100人を対象に、月々1,000〜2,000ドル程度のお金が無条件で支給されるというもの。参加者は実験期間中、ボランティアに励むもよし、今の仕事を続けるもよし、家でダラダラするもよし、国外で暮らすのもよしと何をやってもOK。
広がるベーシックインカムの波オランダやフィンランド、スイスなどで、ベーシックインカムを求める動きが広がりつつあります。日本でもプロジェクトベースでのベーシックインカム支給や、炎上ブロガーとして有名なイケダハヤト氏も自らのアシスタントにベーシックインカムを支給しています。
basicincome.org.ukより今回のY Combinatorによるプロジェクトが興味深いのは、「ベーシックインカムを支給すると人はどのような行動をとるの?」という研究に焦点が当てられている点と、参加者に選ばれさえすればベーシックインカムの支給が無条件という点。
ベーシックインカムの話は、お金を支給すると人は働かなくなってしまうから経済や社会活動が停滞してしまう、いやそんなことはない、といった議論に陥りがちです。
しかし、長年続いた人工知能やロボットについての研究がようやく次のステップに進もうとしている今、将来を見据えたこのプロジェクトには、とても意義があると思います。
生きていくために必要なサービスをロボットが提供して、人々に必要最低限のお金が支給される、つまり何もしなくても生きていけるという未来が訪れたら、人は幸せになるのか?何をしたいと考えるのか?国家単位で実施しようとすると、到底不可能な社会実験をベンチャーキャピタルをバックに、Y Combinatorは行おうとしているんです。
「生きていく」ことを所与のものとするAnd to be clear: we think of basic income as providing a floor, and we believe people should be able to work and earn as much as they want. We hope a minimum level of economic security will give people the freedom to pursue further education or training, find or create a better job, and plan for the future.
Y Combinatorのブログより抜粋
社会人になってから、何か思い切った行動をとろうとするとついてまわるのが(真実かどうかは別として)、家族をどうやしなっていこう、今更親に頼れない、ホームレスになりたくないという金銭面の問題。
今持っている収入源を断つことへの絶対的な恐怖が、人々をチャレンジすることから遠ざけてしまっています。では、生活を確保するだけの収入が保障されていたらどうなるのでしょうか?
今の仕事が大好きだし、最低限以上の贅沢をしたい!という人はそのまま是非好きな事を続けていって欲しいのですが、そもそもお金に対する考えかたが変わってくると思います。
身近な例でいえば、結婚相手の年収を気にする人の数は減るんじゃないでしょうか?絶対年収1億以上じゃなきゃいや!とかいう人は置いておいて、生活に不安を感じたくないという理由で相手に一定の年収を求める人の気持は分からんでもないです。でも生きていけるだけのお金が支給されるとなると、それ以外のものに目を向けるようになって、お金の優先度は相対的に下がりますよね。
また、他にやりたいことがあるけど、生きていくためには仕事を続けないとと考えている人や、やりたいことと生活に折り合いをつけて妥協している人(売れ線の曲ばかりつくるミュージシャンなど)も、自分のやろうとしていることを追求でき、社会全体により高い価値や多様性を与えることができるようになるでしょう。
移民流入の問題や、国全体で実施するとなったときの財源など、高いハードルはいくつもありますが、是非動向を見守っていきたいです。