公開日: 2015/08/30 : 最終更新日:2015/10/06 奇妙な旧世界, 謎の古代文明 UFO, オーバーテク, オカクロ的懐疑論, ロシア, ロストテク, 伝承, 古代宇宙飛行士説, 謎
(2)の続き
<noscript></noscript>そして、これは2012年にロシアのテレビ局が制作した『Mysterious Russian――Saha.Traces of an alien civilization』でもキチンと検証されている。
たしかに、大元のソースは博物学者の調査によるものだった。
これは、なんだかワクワクするものである。
たしかにリヒャルト・マークは死の谷で『何か』をみたのだ。
これは実在を信じる者にとって、大きな追い風となる。
では、『実地調査』はどうだろうか。
大鍋や、ドーム、そしてキノコのような構造物。ここまでにそれらを探し、得られた情報は本当に死の谷の真実――特異構造物に迫っているのか。
まず、『丸い沼』を見つけたイワン・マッケールの調査に目を向けてみよう。
マッケールはパラモーターを使い、死の谷に怪しい地形を発見した。
それは円形の沼で、沼の底には金属らしい硬いモノがあったと。だが、『呪い』のような力がマッケール隊を襲い、それ以上の調査は不可能になった。
こういう話を聞いて、「だらしねぇなぁ。俺ならちゃんと調べ上げてみせるぜ。よし、いっちょやってみよう」と考える好事家はオカクロ特捜部だけではない。
インターネットを通じて、世界津々浦々のフォーティアンが立ち上がった。せっかくの情報化時代の波。乗るしかない このビッグウェーブに。
そうしてワラワラとフォーティアンの集まるフォーラムで、Google Earthを使って怪しい場所が特定された。
この場所【Google Earthリンク】がそうだ。
アクセスするのも手間かと思い、画像を貼っておく。
IT革命の勝利である。
しかし、他の湖沼と比べれば、なんだかマッケール沼は干上がっているように見える。仮に本当に干上がっているならば、そこに鍋がないと我々のロマンが失われるわけで、少しソワソワしてしまう。
枯れ草や泥の下にあるのかも知れない――と誤魔化さず、ここは冷徹に懐疑的視線で見つめてみよう。
そもそも、この永久凍土にポツンとたたずむ円形の沼は、『鍋の傍証』と成り得るのか?
おそらく寒冷地に知見のある――ないし永久凍土フリークの諸兄は、こう言うはずだ。
「いや別に珍しくなくね? これピンゴだろ」と。
ピンゴとは、凍土の湿地帯に生じる小さな丘のことである。事典にはこうある。『平らな湿地帯の中にぽつんと盛り上がる小丘で,丘の内部には氷が詰まっている。高さは数mから60mくらいまである』
地下に生まれた氷塊が、表面を盛り上げて小さな丘を形成する。これをピンゴという。
そして、厳寒期が過ぎると氷の丘も地下の氷塊も溶け始め、沼を形成する。
そう。
べつに丸い沼は珍しくない。
「周囲によく似た地形が多くあった」とマッケールは言うが、それらもピンゴである可能性は高い。
そして、そのまま懐疑的視点で見れば、沼の底にあった硬いモノの説明も容易い。氷だ。
最後まで残ったピンゴのコアが、溶けきらずに沈んでいるだけ。地表下に集積した集塊氷だろうね、と懐疑論者は氷よりも冷たく言い放つだろう。
「なんだよ! じゃあマッケール隊を襲った体調不良は何だって言うんだよ! 呪いって言ったじゃん! 竜王の呪いって言ったじゃん!」
と諸兄は憤るかも知れない。
だが、かの地は永久凍土。これも説明をつけようとすれば簡単だ。
メタンガスだろう。
永久凍土にはCO2やメタンが多く含まれ凍土の融解と共に大気中に放出される。
近年、地球温暖化の影響もあってか、永久凍土の融解が早まってきているとの見方があり、大規模な気候変動をもたらすであろう膨大なメタンは『時限爆弾』とまで表現される。
それら『温室効果ガス』が凍土の溶けつつある死の谷にも存在することは疑うまでもない事実。
そしてぬかるみだらけの湿地帯を歩くと、地中の『ガス溜まり』を踏み破ってしまう可能性があることも想像に難くない。
つまり『竜王の呪い』は、それらのガスを吸引した事による中毒症状であると考えることが出来る。
そして、凍土から浮上したメタンやリンなどを含むガスが、何らかのきっかけで引火発光し、大気中に『火柱』や『火球』を形作ることも――あるかも知れない。
大鍋はともかく、『未知の金属で出来たドーム』に関しては、リヒャルト・マーク教授の著作から引用した部分に該当した箇所が見つからず、ソースが判然としない。膨大な著作全てに目を通せば「内部で一泊した」という記述を見つけることが出来るのだろうか。ロシア語に堪能な諸兄は是非挑戦してみて欲しい。
では、『ATフィールドっぽいバリア』はどうか。
これは、月並みなことしか言えないが、レンズゴースト、ないしレンズフレアの可能性が高いと思う。
撮影者であるパブロフたちが目撃、および撮影した時刻はソースが正しければ午前3時から午前6時の間。
撮影された年は2008年6月7日。
調べてみれば、その日、死の谷周辺地域の日の出は4時18分。
ちょうどライジングサンが地平線を明るくし始めた前後に撮影されたことになる。地平線から少しだけ顔を出した太陽が、レンズゴーストを生んだのではなかろうか。
写真で見るかぎり空もなんとなく白んでおり、よく見ればバリアの外周が虹色になっている。
写り込んでいる星座の位置から、本当に死の谷で撮ったのか、本当にその時間に撮ったのか――が特定できるかも知れないが、そこまでするのも嫌らしいし、能力もないのでやめておく。
これが本当にレンズゴーストかどうかは定かでないが、残念ながら、どうも確たる証拠とは言えそうにない。
懐疑派の諸兄などはバリア写真を見て、「フッ……あきらかにレンズゴーストではないか。こんなモノを見抜けないとは、お里が知れるなオカ番マツカク。約束通り今日からこのサイトは我々諸兄連合とASIOSがしきらせてもらう」とお怒りになられたかもだが、ご容赦いただきたい。夢を見たかったのです。夢を。厨二病な夢を。一瞬でも夢を……。
かくして、現状で出回っている『死の谷』情報のほとんどが自然現象で説明のつくモノだった。残念である。
だがリヒャルト・マークは、鍋に似た何かを見た。
教授は、『ウオッカ』の飲み過ぎだったのか。
それとも『ガス』でアッパーなフィーリングになったのか。
あるいは本当にあったのか。
全ての円形の沼がピンゴでなく、中には本当に鍋やドームの沈んだモノがあるかも知れない。が、現状では証拠らしき証拠は一つもない。
最後に、研究者全てが目をそらしている一つの可能性について触れねばならない。
この大鍋が『実際に大鍋』である可能性だ。
パエリアなど、何らかの料理を作る意図をもって、鋳造され、飽きて放置されたなれの果て。その可能性を忘れてはならない。
つまりパエリアで炊かれたムール貝が、調理のさなかパチンと爆ぜて、上空へ飛び、ちょうどツングースカに飛来した隕石を砕き去った。
人類を救ったのは「パエリアって、なんでこんなワケわからん貝が入ってんの? 食べにくいしイラネ」とまで言われてきた要らない子、ムール貝だったんだよ! パエリアにムール貝は必要だったんだ!
考えてはみた、作ってはみたモノの、本当にすいませんでした。
パエリアがイタリア、スペイン料理でありシベリアには無いと言うことも把握しており、ひとときの冗談のためにロシア人しいてはロシア文化を著しく貶めたことを重ねてお詫び申し上げます。
やはりムール貝はいらないですね。
冗談はともかく、『大鍋は実際に大鍋』あるいは『ソ連軍によって遺棄された何らかの兵器の残骸』である可能性を忘れてはならない。
※追記――『大鍋は実際に大鍋』に関連して、twitterにて「パエリアじゃなく、お湯を沸かしたんじゃ?」という指摘をいただいた。
お湯を沸かして、暖を取るため入浴したのではないか――という斬新な発想だ。つまり『五右衛門風呂仮説』だ。雪原で入浴とは風流で実にいい、日本酒とトックリを持ちこみたくなる。が、「誰が入浴したの?」という疑問が新たに浮上する。
かくして死の谷における一連の特異構造物について、証拠らしい証拠はいまだ挙がっていない。
とはいえ「なにかあるんじゃないか」と感じさせる神秘性をシベリアは秘めている。
1964年にはサハ共和国北シベリアのハイール湖で科学者グループが未知の古代生物と遭遇したと主張した。
これをコムソモリスカヤ・プラウダ紙が報じ、大論争を巻き起こした。それはプレシオサウルスによく似ており、北方に孤立した湖の環境によって特異な進化を遂げたのではないかと考えられた。
(これは現在では様々な要因から『信憑性なし』とされているが)
最近では2013年、同じシベリアはサハ共和国のラビンキル湖で巨大な生物の遺骸が発見されている。
それがどういう生物だったかはよくわからないが、このラビングキル湖には古来から『巨大な生物が湖底にいる』という伝承があり、「すわ、ロシアンネッシーでござるか」と未確認動物マニアの胸を熱くした。
もしかしたら、湖底は地下深くまで続いており、それが未発見の地底湖と繋がっており、そこにはヴェルヌの描いたような旧世界が――。とロマンは広がる。
ほかにもUMAアルマス、チュチュナー、ディアトロフ峠でも触れたMenkvi。信憑性は薄いが、古い炭鉱の奥で恐竜のような未確認生物が目撃されたとの話もある。
神秘の土地だ。人間を寄せ付けない極寒の聖域に、人知れず何かが存在しているのではないか。そう思わせる不思議な魅力がある。
極北の地に、凍り付いた謎の構造物は存在するか? 残念ながらかの地では2015年になってもなにも見つかっておらず、遠く温帯の地で新情報を待つばかりだ。
でも未知の何かが、凍り付きながらも地球を守っている――。誰にも知られず、誰にも頼らず、誰よりも真剣に地球の空を見張っている。そう考えると少しだけ心強く思える。
まったく調査成果があがっていない状況ではあるが、いつか、研究者たちの地道な調査が実って、大鍋が発見される日が来るのだろうか。その日が来たら、どのような結果でも喜んで加筆させていただきたい。
冬来りなば春遠からじ、そう信じて。
オカルト・クロニクル:http://okakuro.org/puma-punku/ より転載