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・どこかで失くしてしまった魂の自由と剛毅さ

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   私には苦しみは何もなかった。
   私は苦しむということの味を知らない。私は人々が苦しむのを見てきたし、その人々の中で起きているに違いないことを想像することはできる。だがこの生涯では、私は一瞬たりとも苦しんだことはなかった。だからあなたの言う通りで、私はほとんど光明を得て生まれて来た。

   私の過去世では、ほんの少し未完成なままに残されていた仕事があった。
   そのゆえに最初の20年間はその境界線の上にいた。つまり闇と無意識の苦しみの世界と、一方が至福と光と祝福の世界の境目だ。だがそれほど光明に近いというだけでも、苦しむということはあり得なくなる。苦悶を通り抜けることも、悪夢を見ることもあり得ない。するとその人の人生は、普通の子どもに備わることのないような、さまざまな資質を持つことになる。

   すなわち勇気と高潔さ、絶対に妥協しない態度、全身で打ち込むこと―つまり結果がどのようになろうとも決して引き返すことはなく、あたかも結果など問題ではないかのように、喜んでしていることを受け入れる、というような資質だ。

   肝心なことは、自分がどのようにその状況と向かい合ったかということだ。
   自分は全身全霊で、全面的にそれと関わり、自分には何の疑いもなかったという態度だ。そしてその信頼は究極のものであり、しかし相対的ではなく、どのような条件にも依存せず、無条件のものだったと言えること。それが肝心であり、結果ではない。結果は重要ではない。

   その行為自体が、それ自身の報酬だ。
   それこそが、私が生きてきたやり方だった。そしてもし私がもう一度チャンスを与えられるなら、私は何度でも何度でも、何一つ変えることなく同じやり方を通したい。その理由は単純で、この短い生涯のあいだであっても、実にたくさんのことが起き、私はそうした出来事を何でも喜んで経験してきたからだ。

どこかで失くしてしまった魂の自由と剛毅さ

   私の両親だけでなく、近所の者や教師たちでさえが、私をどう扱い、どのように分類するべきかにみなが当惑していた。彼らはあらゆる種類の人間を知っていたが、それでも私を見極めかねていた。

   私の高校の校長は実に厳格な人で、非常な筋金入りのスパルタ教育者だった。
   私が中学から高校に移ると、まさに初日から彼との闘いが始まった。その学校では毎朝、授業の初めに全員一斉の祈祷の時間があった。だが私は黙ったままで、そのヒンズー教の神を褒め称える祈りには加わらなかった。その神は人間の体を持ち、象の頭を持つあの象神のガネーシャだ。

   彼は私を呼び、「そういう態度は許さない」と言った。
   私は言った。「何も許す必要なんかありません。あなたはできることを何でもしたらいい。でも僕も、自分が正しいと思うことは何でもするので、そのことは覚えておいてください。僕にとって祈りはナンセンスだ。それも特にあんな神ではね。僕は黙っていることはできるけれど、祈るなんてことはできません」と言った。

   「私は非常に厳しい人間なんだ」と校長は言った。
   「別にかまいませんね。僕を殺してもいいですよ、あなたにできるのはせいぜいそのくらいのことだ。しかし殺されようが殺されまいが、僕はあんな祈りには加わりません。僕はどんな神も信じていないし、特にあんなばかげた神や像には祈れない。それに僕はヒンズー教徒じゃない。あなたは僕と一緒に法廷に出なければならなくなりますよ」と私は言った。

   「それはまた何のためだ?」と彼は言い、私は言った。
   「それは僕が属してもいない宗教に、僕を強制したことです。これは法律に反しています。ですから僕と一緒に裁判所まで来てください」。私は友人の父親で、よい弁護士を1人知っていた。それで、「僕には知り合いの弁護士がいます。それで必要な時にはいつでも頼むからと言ってあるので、僕は直接裁判所へ行きますからあなたも来てください」と言った。

   「君は非常に変わった人間らしいね。この私を裁判所に連れ出そうと云うのかね?」と校長は言った。「当然です。あなたのしていることは罪ですからね。僕はヒンズー教徒ではないのに、どうしてヒンズー教の祈りに参加しなければいけないのですか? この学校はヒンズー教の学校ではないし、これは国立の学校で、政府は非宗教のはずですよ。さあ、僕と一緒に裁判所に来てください。そうすれば弁護士に事情を説明して、あなたを行政長官の前へ連れて行くようにしますから」、と私は言った。

   「なんてことだ! 君がそんな極端に物事を誇張するとは思ってもみなかった」
   私は言った、「誇張しているのは僕じゃない。あなたが僕に誇張させているんですよ。ですが一緒に来ないのであれば、あなたのその厳しさはすべて忘れることですね。それにお互いに紹介し合うのに、今日は初日だしちょうどいい。僕にはあなたがわかったし、あなたも僕のことを知った。これからはいつどんなことが起こるにしても、あなたが相手にしている僕は、(その辺にいる)トムやジョンやハリーじゃないってことを覚えておくことですよ」

   私は彼に言った、「これはあなたの初めての失敗だから、今日のところはあなたを許してもいいですよ。でもこの次に同じ状況になれば、あなたは僕と一緒に裁判所へ行かねばなりませんからね」 そして私は彼の部屋を出たが、彼は黙ったままだった。

   その日の夜、校長は私の父に会いに来た。
   そして「いったい、あの子はどういう子なんですか?」と聞いた。父は、「私たちにはあの子をどうにもできません。ですがあなたは良く知られた厳格な規律主義者だから、まだひよっこのあの子を何とかできるでしょう」 「彼はひよっこなんかじゃない。彼は私を裁判所に呼び出すと云って脅かしたんです。しかも彼にはもう弁護士がついていて、その弁護士は私も知っている。あの子がその弁護士と話しているのを何度も見たことがある。何しろ彼らはひどく歳も違うのに、2人は実に仲の良い友達で、まるで同世代の人間みたいに話すんです。ところで私はどうしたもんでしょうね?」

   父は答えて言った、「それは誰にもわからないし、あなたはあなたのやり方を見つけるしかありませんね。私たちも自分たちなりのやり方を見つけましたから。つまり、誰もあの子の邪魔はしないことにしたのです。なんでも本人がやりたいようにさせておきます。それにあの子は誰にも悪さをしたり害を与えたりしないので、それが一番簡単なんです。ただ本人の邪魔をしなければいいんです。そうでなかったならば、事があまりにも大きくなり過ぎて、手のつけられないことになります」

   翌日、高校での祈祷の時間、私はまた黙って立っていた。
   校長はひどく腹を立てており、彼の腹の中が煮えくり返っているのが私にはわかった。ひどく恥をかかされたように感じていたのだ。彼は私を呼び出さなかったが、私は彼の部屋に出向いた。「別に君を呼ばなかったが」と彼は言った。「ですがあなたには呼び出す勇気がなかっただけで、本当は呼びつけたかったはずです」(略)

   校長は言った。「ねえ君、我々は妥協しなければだめだよ。こんなことばかりしていたんじゃ、君の学校での評判やイメージが台無しになるよ」 「ですが僕はどんな妥協も信じる気はありません。僕はあなたのイメージを壊すつもりはない。ただ僕に構わないでください。僕は決して破壊的な人間ではないし、ただほっといてほしいんです。もし先生が僕にそのことを約束してくれれば、先生が僕との揉め事に巻き込まれることはありません」 そして彼は約束しなければならなかった。「私は君に干渉しない。何でも好きなようにしたらいい」

   だが彼はまた、私の受けていた授業で化学を教えていた。
   私はいつでも、自分がそうしたい時には、彼に訊かずに教室から出て行ったし、自分でそうしたくなれば彼の許可を求めることなく、いつでも教室に入って行った。そして校長は「ああいうことは良くない」と私に言った。

   「僕のことはほっといてくれと、先生にはすでに言ったはずですが。それが僕たちの了解事項じゃなかったんですか? 僕が外に出たい時、もし先生に許可を求めて先生が駄目だと行ったら、僕はそれを聞かずに出て行くことになるでしょう。だから僕は先生に恥をかかさないために、許可を求めたりせずに黙って出て行っているんです。それも先生のイメージを保つためなんですよ」と私は言った。彼は途方に暮れていた。


           『神秘家の道』  OSHO  市民出版社

                          抜粋


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