第14話 姫、白雀寺で労苦を受けられる
翌日、宮廷から三挺の駕籠が白雀寺に差し向けられました。その中の一挺には、妙荘王の特使、宮女永蓮が乗っていました。宮中では妙善姫が白雀寺へ送られることを秘密にしていたのか、あるいは妙荘王が禁じたものか分かりませんが、誰一人見送る者もいない淋しい旅立ちでした。
姫は、日夜丹精込めて手入れしてきた花園を優しく見渡してから、改めて父王の在所に向かって深々と頭を下げました。礼拝を終えた姫は、待たせてあった駕籠に乗り込み、保母を従えて静かに宮門に向かいました。この間、姫が手塩に掛けて育ててきた数々の花が、別れを悲しみ名残りを惜しむかのように、風もないのに姫に向かって靡いていました。
やがて駕籠が宮門に差し掛かったとき、突然妙音・妙元の二姉姫が駕籠の前に姿を現しました。二方は、妹姫の白雀寺行きを婿達から聞いて、密かに別れを告げに来たのです。駕籠の脇に駈け寄る二人の顔、簾を開いて見上げる顔、お互いの瞳はしっかりと見つめ合いました。
「妙善姫よ」
「姉姫様」
感無量の余り互いに言葉無く、涙、また涙でした。骨肉の別離は切なく悲しく、明日の運命も定かでない妹姫の身の上を案じて、二人の姉姫の胸は張り裂けんばかりです。
近頃の妙音・妙元姫には、妹姫の心境が少しずつ分かり掛けていました。先日妹姫が説いた言葉が時々脳裏に浮かび上がり、その記憶が甦ってくるのです。もしも婿殿を迎えていなかったなら、あるいは妹姫に感化され、今頃は同じ道を歩んでいたかも知れません。二人にはこのような思いがあって、妹姫がいじらしく哀れになって言葉も出ません。
妙善姫も、二方の姉姫を見て、同じく喉が詰まりました。万感胸に迫って只、お互いに両手を握り頷き合うばかりでした。三人の見つめ合う瞳は、全てを語り、千万の言葉に勝るものがあり、お互いの心は通じ合っていました。悲しい別離を終えた妙善姫一行の駕籠は、姉姫達の熱い涙に見送られながら、幾多の想い出を残して宮門を出ました。後に続く駕籠の中から、微かに忍び泣く保母の声が一入哀れを誘いました。
姫が宮殿を出て白雀寺に向かわれたという噂が何処からともなく洩れ流れ、沿道には姫君をお見送りしようと数多くの男女が密かに集まり、何時しか沿道はこうした群衆で埋め尽くされました。駕籠が通り掛かると皆は一斉に合掌し、心から姫に別れを告げました。そして誰ともなく
「慈悲深き弥陀および仏陀よ。宏大無辺の仏法もちて姫君を護り給え」
「姫よ、苦行に撓まず、功徳を修め給え」
「女人のために菩薩道を行じ、限り無き果を証し給え」
と口々に姫君を激励しました。
日頃民衆は、姫の心が優しく庶民的であることを知っており、尊敬と共に親密感を抱いていました。妙荘王の謀を知らない民衆は、宮中に於ける修行よりも白雀寺に赴いて仏道に専念されるほうが幾層倍も有益であるに相違ないと善意に解釈し、姫君を心から祝福しました。
実際、姫には天人の大師相が備わっていました。宮中に留まれば世嗣の妃になられ、一方国を治めれば列国を靡かせられる徳を有し、女人でありながら人王の相があり、また仏道を行ずれば三界の神人鬼を済度する菩薩相が備わっているのでした。毫も、魔障に屈する筈がありません。
姫の一行が白雀寺に着くと、門前には寺の長老尼僧のほか全寺の尼僧が挙って出迎えに出ていました。姫は出迎えの人達一人一人と掌を合わせて心から謝し、保母と永蓮を随えて寺内に入りました。手足を浄めて大雄宝殿に進み、弥陀と仏陀の像に献香し、心を込めて礼拝した後、本堂に於いて初めて集まった尼僧達と会見しました。姫は落ち着いた声で、静かに長老尼僧ほか一同に
「この度、父君の命により本寺へ修行に参りました。縁浅く未熟な私ですが、求道の志固く、仏陀の得られた心法を得たい一心でございます。どうぞ長老様始め先輩比丘尼方々の限りない高徳をもって御指導下さいますようお願い申し上げます」
姫の言葉は理に適っており、慇懃敬虔な求道者の態度でありましたので、一同は驚きと喜びの心で一杯となり、たちまち堂内に和やかな空気が醸し出されました。長老尼僧も姫の言葉に相槌を打って頷いていましたが、姫の側に控えている永蓮の冷たい瞳に出合い、慌てて両手を振りながら
「実は本日姫が本寺院にいらっしゃったのは、王様が姫に修行を許されたのではなく、修行が如何に苦しいかを目の当たりにお見せし、修行を諦め一日も早く翻意されることを願われていられるのでございます」
と、姫が宮中に帰られることを勧めました。
「長老様、私は軽薄な憧れで修めているのではありません。切実に真理を尋ね、妙法を求めています。宮中に帰る気持ちは、毛頭ございません。ここに居て、如何なる艱難苦行でも喜んでお受けする覚悟を抱いております」
「ここは、宮殿の生活とは異なります。例え高貴な身分の方であろうとも、一度仏門に入れば厳しい戒律を守り、粗衣粗食に甘んじ、身の回りの事は全て独りで片づけなければなりません。とても姫様の出来ることではございませんから、早くお帰り下さい」
「いいえ、覚悟は出来ております。一修行者として、当然の勤めです。無論私の本願も、それを望んでおります」
「新しく入門した人は、誰彼の差別なく、下積みの仕事をすることになっています。勿論王女の生まれである姫も、一旦世を捨てて仏門に入られた以上はこれらの規則に遵わなければなりませんが、耐えられますか」
「喜んで、お指図通り課せられた責務を果たし尽くしましょう」
長老尼僧は、耐え難い心情を蔽い隠して
「どんなに辛い事でも辛抱できますか。まず夜は遅く寝、朝は早くから起きて、拭き掃除・洗濯・薪割り・炊事・水汲み・香焚きなどをして貰わなければなりません。仕事の合間には、休み無く草鞋を編まなければなりません」「結構でございます。心から喜んで、与えられた分量を働かせていただきます」
と、姫は躊躇なくきっぱりと言い切りました。
姫の言葉に打たれた長老尼僧は、王命とはいえ、これ以上自分の気持ちを偽ってまでして姫を説得する気にはなれませんでした。今度は、他の尼僧が姫に尋ねました。
「姫は得難い身分を捨ててまでして、何故修行をなさるのですか」
「自由に修行できる身分以上の身分はありません」
「朝夕宮女達に傅かれ、身に鳳繍の錦衣を纏い、山海の珍味を食する結構な身分ではありませんか」
「それは罪を作り、悪の因果をなしているだけのものです。王侯将相に転生したのは、前世の善因によるものです。今の宮殿生活はそれを忘れ、罪悪を重ねているだけです。このような状態では、来世にまた苦を受けなければならないでしょう」
「しかし、私達は不運な生まれが多く、世の中から捨てられた者がほとんどです。ある者は不孝な子供を持ち、ある者は孤独や貧困で苦しみ、寄る辺のない老人や未亡人達が出家し、髪を剃って比丘尼となったものです。朝晩恥を忍んで家々を回っては食を乞い、人の憐れみを受ける境遇です。また檀家の人が寺に参れば、私達の身を削ってでも賓客の如く手厚くもてなさなければなりません。姫は簡単に仰いますが、私達は時折り金持ちや裕福な人を見ると、羨ましさと限りない憧れを感じることがあり、悲しい思いをすることもあります」
実のところ白雀寺の生活は、他の寺に比して極貧厳戒著しく、食事は清茶淡飯で少量の塩を用いるだけで油などを使わず、外部との対話も一切禁じられていました。そのため尼僧の中には、このような生活に耐えられず、逃げ出す者もありました。
姫は、この尼僧の言葉を聞いて笑い出してしまいました。
「比丘尼達は既に弥陀に帰依し、修行に身を置く人ではありませんか。もっと心神を定め、迷ったりしてはなりません。尼僧になるには、三生の幸がなければなりません。高邁な仏弟子であり、善徳厚き縁者なのです。決して卑しい身分ではありませんから、絶対に卑下なさらないで下さい」
姫は皆を嗜めてから、更に語気を強め
「修行をするのは、前世の罪業を消滅させるためだけではありません。その目的は、過去の因縁を清算することです。今の世の人々は、自暴自棄になり、奸逆悪道を恣に行って悪因を成しています。その悪がやがて満つれば、恐ろしい果の報復に悶え苦しむことになるでしょう。現実の快楽は未来の業苦の因素となり、また現実の艱難は未来の快楽の因素となります。単茶清飯であっても、何で憂うことがありましょうか」
と語りました。この時、傍らにいた永蓮が水を差すように
「姫、修行は男の人がするものです。女の身体にはいろいろと不便があり、不潔なためにとても修めることは出来ません」
すると姫は、永蓮のほうを振り向いて
「だからこそ女は、修行しなければならないのです。女の身体は汚濁不浄で男より五百級も罪が重く、しかも五漏の身体となっています」
「五漏とは何ですか」
「五漏の一つは物の主になれないこと、次は人の主になれないこと、三は家の主になれないこと、四は身体の主になれないこと、更に一つ、聖なる主になれないことを言うのです」
「それでは尚更、修行は困難ではありませんか」
「困難があっても、絶対になれないのではありません。熱意・信心が不足だからです。罪が重いからこそ、もっと修練を積むべきなのです。菩薩行は、容易に証されるものではありません。今まで女人の修行者で無上正等正覚を得た人が少ないのは、縁に薄く、厳しさが足りないからです」
一同は、打ち静まって、姫の説法に聞き惚れてしまいました。長老は内心喜びを禁ずることが出来なかったものの、妙荘王の厳命を懼れ、永蓮を意識して態と困ったようなふりを装い、心残りではあるが座を閉じるように命じました。
姫を連れて後殿に向かった長老は内心で、妙荘王の厳命に逆らえば由々しき結果となる、さりとて姫の心を変えることも出来ず困ったことになった、と考えながら三清殿の中にある丹房に姫・保母・永蓮の三人を案内しました。
ここは姫の居室であり、坐行所を兼ねていました。両扉は固く閉ざされて、外気も光線も全く入らない部屋でした。その日から姫・保母・永蓮の三人は、ここで起居を共にすることになりました。
朝早くから十七個ある大甕に水を汲み、火焚き、米搗き、炊事と片付け、食後は薪割り、掃除と雑用が山積しており、また夜遅くまで草鞋を作り、片時も休む時間はありません。
このような忙しい仕事を与えられれば大の男でも参ってしまうのに、姫には苦の陰すら見られません。従って、座を組んでゆったり瞑想する時間などありませんでしたが、花園で行住坐臥の修行の妙を会得された姫は、一人楽しく黙々とこれを果たし行い続けました。草鞋編みの時間に、心霊の法輪を転じていたのでありました。
保母も一心に努めたが堪え切れず、時には泣くこともありましたが、その時には姫の優しい激励と安慰がありました。
「保母よ、頑張って下さい。修行には、苦労は付き物です。それに耐え忍んでこそ、得道の機会に遇り会えます。苦しければ苦しいほど、それだけ多く徳を培っているのです。道が一尺高くなるに従って、千丈の魔の迫害を受けなければなりません。慈悲の心を抱いて、決して怨恨の念を生じてはなりません」
「姫様。お心遣い下さいますな。これからは、いっそう心を引き締めて参ります」
保母は、唇を噛み締め、溢れる涙を堪え、姫の温情に咽び泣きました。今では只姫の言葉が保母の心の糧であり、唯一の慰めと拠り所でありました。
第15話 監視役の永蓮、終に感化される
このようにして妙善姫は、入門の日から厳しい日課を繰り返しながら、一心不乱に修行に励みました。姫の真摯な姿は、白雀寺全ての尼僧に大いなる感動を与えたのであります。
日が経つに伴い全尼僧の姫に対する態度は、心服と尊敬に変わり、中には姫の仕事を見かねて替わって上げたいと思う尼僧もありましたが、冷たく監視する永蓮の眼を懼れて申し出る者はなく、みな心の中で只同情するばかりでした。
しかしながら所詮永蓮も人の子、人情の機微に触れて感動しないはずはありません。毎日姫の行動を監視しているうちに、何時しか姫に対する尊敬の念が生じてきました。水汲みの折りには手伝う仕種を示したり、薪割りの折りには自発的に加勢する態度を採るようになってきました。けれども姫は、人の尊敬や同情を全く意に介せず、与えられた仕事を黙々と果たすだけでした。
見かねた永蓮が
「姫、そのように働かれては、遅かれ早かれ倒れてしまわれます。永蓮に仕事の一部でも、暫く代わらせていただくことをお許し下さい」
と無理に代わろうとしても、姫は
「それは、なりません。私は、父君に対して不孝な娘です。罪状から言えば、重罰を受けても当然の事です。父君の特別の温情により、当寺で働けるだけでも大変に幸せです。自分が働かず他人に頼んだりすれば、父君に対して恥ずかしいだけでなく、天地に対しても申し訳がありません。第一、私自身の良心が絶対に許しません。そなたの心遣いには心から感謝しますが、やはり自分の行は自分で修めます」
頭を下げて永蓮の申し出を静かに断る姫の言葉に返す言葉もなく、一段と深く感激した永蓮は、下働きばかりをされている姫に専心一意修行をしていただこうと思い
「姫君の御講説は、全く理に適っていて、大変よく解ります。しかし修行するにも、そのための時間が必要です。今の姫君の御様子を拝見いたしますに、拝仏念経や朝晩の勤行をなさる時間が全くございません。雑務のほうは私がいたしますから、姫君は求道参悟に専念され、一日も早く正果を成就していただきたいと存じます」
と、真心込めて申し上げました。
いつの間にか周囲に十数人の尼僧が集まり、二人の会話を感動の涙で聞いていました。今までは永蓮の監視の目を恐れていただけに、本人の変わりように驚きの色を示し、一斉に堰を切ったように永蓮を褒め称え、永蓮の意見に賛成し、みなで姫の仕事を手伝おうと申し出ました。尼僧達のこの申し出に対して姫は、喜びの色を隠しきれず
「皆様の御厚情を感謝します。そなた達の仏縁夙根が深いことは、よく解りました。しかしそなた達は、その一を知っても二を存じません。修道するには、開悟の法を得て外形に囚われることなく、要は誠心を持つことが肝腎です。真心を持って法に帰依すれば、経典を誦え、経文を諳んじなくても必ず仏・菩薩に感応します。もしも心して行ぜずば、外形的に苦行難行をしても無益です。今の私には礼拝勤行の暇はありませんが、心は片時も法・仏を離れてはいません。全ての仕事を通じてこそ、本当の修行があります。そなた達も、個々に課せられた功果に精勤して、その中から尊い真理を会得して下さい」
と尼僧達の厚意に感謝すると共に、手伝いの申し出をきっぱりと断りました。
姫君の決意の固いことを知った永蓮達は、それ以上仕事の話はせず、何らかの方法を講じて姫をお手助けすればよいと思い、尼僧達をそれぞれの持ち場に帰らせました。
その晩、寝付かれない永蓮は、姫君が寝まれたのを見計らって密かに床を抜け出し、足音を忍ばせて尼僧達の部屋に這入りました。そして皆を静かに起こし、何とかして姫君を休ませる方法はないものかと協議しました。
永蓮は今まで姫に冷たく当たってきただけに良心の呵責も強く、姫の艱難辛苦を看過するに忍びない気持ちで一杯でした。姫がこのままの状態を続ければ、必ず身体を壊してしまうに違いない。姫を思う気持ちに、一入駆られてならなかったのです。勿論各尼僧も、姫の事を真剣に心配し、いろいろと皆で相談しましたが、その結果
「それでは、姫君が寝まれた時間を利用して、皆で手分けして分からないように仕事を片付けてしまいましょう」
という永蓮の案に全員賛成し、早速に服を着替えるとそれぞれ分担して姫君のなすべき仕事を瞬く間に片付けてしまいました。
翌朝、姫は起きてみて驚きました。どの甕も水が一杯に溢れ、草鞋も定足の分に編まれていました。誰の仕業であろう、姫は側に居合わせた尼僧達に次々と尋ねましたが、誰も首を振って知らない振りをしました。そのうち尼僧の一人が
「不思議な事です。僅かな時間で、これほどまでに多くの仕事が出来るわけがありません。人間業でなく、仏法無辺の霊験でございましょう」
この時、永蓮が側にやって来て素知らぬ振りをして尼僧達から事の経緯を聞いて、さも驚いた顔で重々しく断言しました。
「これは、確かに奇蹟です。きっと姫の真心が弥陀と仏陀に感応され、特別に法力を施されて密かに姫を助けて下さったに違いありません。私達は、静かに今後の様子を見続けましょう。もし毎日このような状態が続けば、確かに弥陀の護力に違いないでしょう」
皆はなるほどと頷いていましたが、姫は多くを語らず、ただ感激の面持ちを顕しているだけでありました。
それからの毎日は同じような状態が続き、皆の結束は日一日と固まっていきました。姫に知られないように言動には皆が特に留意し、姫君の修行を協力一致して側面から援助しようという考えが無形のうちに醸し出されました。
姫が皆の善意を知らないわけがありましょうか、皆の夙根の深いことを祈って黙って為すがままにさせました。しかし、それでも姫は、朝な夕な草鞋編みに努め、出来上がった草鞋は床の下に積み重ねて大切に保管しました。誰ぞ知ろう、計らずもこの草鞋が将来姫の修行に役立ち、成道を助けることになるのです。
寺の長老や尼僧達は、今はすっかり妙荘王の厳命を忘れ、姫に心服して共に勤行を怠りませんでした。永蓮も監視の役目を忘れて、姫に従って修行するようになりました。徳の感化は偉大なもので、妙荘王の権力を以てしても、姫の強い信念に打ち勝つことが出来ませんでした。今では姫に対する崇敬の気持ちは、弥陀と仏陀に対するものに似たものがありました。
姫は暇を見ては独り丹房に引き籠もり、神霊を純熟に磨くことに励みました。神気の定静に伴って、いよいよ大法輪を転じて、日々に無念無想の境界に達していきました。
保母は長い間姫に従っているので雑念を払い煩悩を滅するほどに進歩してきましたが、永蓮はまだ縁浅く時々外魔に侵入されることが多かったのでますます精進修行に励みました。
全寺の尼僧達も、姫に感化され、修行に一層真剣味が加わってきました。何事によらず好い意味での競争は、お互いの霊性を高め、相互の磨き合いは成就を加速度的に促すものです。かくして白雀寺の空気は活溌溌地に溢れ、霊気が盛り上がって天地に貫く感がありました。
しかし修行には魔考があり『好事魔多し』『天に不測の風雲あり、人に旦暮の禍福あり』の譬え通り、ここに誰もが予知し得なかった一大事件が突発したのであります。
続く・・・