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愛知ソニア〜イナンヌが語るアヌ一族の物語ー19

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2013年03月02日

裁判にかけられたエンリル


 あの出来事は、アヌンナキにとっても決して忘れることができません。
それは灼熱の太陽が降り注いでいた、真夏のことでした

イナンナは語る

 エンリルはあるときレバノン杉に囲まれた場所にある城から森の中を散歩ししていた。
そのあたりにはニンマーが創立した病院があり、
その辺一帯の谷間を彼女は「シュルバク」と名づけた。
低地には大きな湖が広がっていた。その畔に病院は建っていた。

 アヌンナキへの看病が目的でニビルから地球にやってきたニンマーといっしょに
地球に来た美しい乙女の看護婦たちがいた。彼女たちは夏の暑い盛りにはよく、
湖畔に着ものを脱ぎ捨てて水浴びをした。

 ちょうどエンリルがそのあたりにさしかかったときも、
暑い夏の盛りで、彼女たちは笑いながら水浴びをしていた。

 彼は足を止めるとその光景に見惚れてしまった。
身を木陰にひそめてエンリルはじっと眺めていた。舞を踊るように水の中で戯れる、
まさしくニビルの女神たちの姿は、彼をほとんど陶酔状態にしてしまうほどの
光景だったので釘づけになってしまった。

 そのとき、一人の乙女が白い砂浜に上がってきた。
その乙女は、「スド」といい、ニンマーが特に可愛がっている看護婦であるが、
年齢はなかでもいちばん若く、まだ幼さを残していた。

 もちろんエンリルは、全裸のスドに心を奪われたまま、
総司令官という立場も忘れて、彼女に近づいていった。
湧きあがる感情をどうにか抑えようとして、彼は何気ないふりをして彼女に近づいた。

 とっさのことにスドは悲鳴をあげそうになった。
慌ててなんとか近くに生えていた大きな葉で身を隠したが、
硬直したままだった。そんな彼女をなだめるように見ながら、
エンリルは彼女の前にひざまづいた。
そして優しい声で自らの名を名乗り出ると、彼女の手を取ってキスをした。

 「怖がらないでおくれ。ニンマーは私の妹さ。私の城には、ニビルのとっておきの果実酒がある。
さあ、ドレスを身につけなさい。一緒に飲むのを付き合っておくれ?」

 しばらくのあいだスドは茫然としていたが、徐々に和らいでいった。

 (エンリル様って、怖い方だと思っていたけれど・・・
こんなチャンスはまたとないかもしれない・・・)

と、スドは思った。

 エンリルの優しくて落ち着きがあり、なんとなく高貴さが漂う話し方にスドは魅力を感じていたが、
エンリルのほうは、すっかり自分が地球総司令官の立場にいることなどすっかり忘れ、
彼女にひたすら惹かれていった。

 スドはというと、ニンマーが、

 「アヌンナキの男神には、くれぐれも注意するように」

 と、常に彼女たちに忠告していた事も無視して、エンリルについて行った。
その道のりで彼らは楽しそうに会話し、レバノン杉の森をぬって、
エンリルの城まで歩いてやってきた。

 いつのまにかエンリルは、スドの手をしっかりと握っていた。
城の中に導かれたスドは、窓からの景色が美しい部屋に案内された。
エンリルは彼女に、豪華な椅子に腰をかけるように勧め、
特別なニビルの果実酒を取り出し、彼女に注いだ。

 (なんて、美味しいんだろう! ニビルを離れてから、こんな味は忘れていたわ・・・)

 スドはそんなことを思いながら、たちまちグラスを空にした。
するとたちまち湧き上がるような幸福感に満たされた。
そして、次の瞬間には、目を閉じてぐったりと彼女は椅子に倒れかかった。

 彼女が目を覚ましたときには、事のすべてが終わっていた。
スドはわめき泣きながら、エンリルの城を去った。

 まだほんの乙女にすぎないスドが受けた打撃は大きかった。
この出来事で彼女は、エンリルの子を身ごもってしまった。

 (このことはいずれ、ニンマー様にもバレてしまう・・・いったいわたしはどうすればいいの?)

 スドは思い悩んだ末、すべてをニンマーに打ち明けることにした。
その時点では彼女も、これが一族の大騒動を引き起こすことになるとはスドは思い悩んだ末、
すべてをニンマーに打ち明けることにした。その時点では彼女も、
これが一族の大騒動を引き起こすことになるとはまず思ってみなかった。

 ニビル星人の妊娠期間は地球時間に換算すると約9日間という、
至って短縮妊娠であり、分娩も人間のように苦しみを伴わない。
それにしても、スドからこの出来事を打ち明けられたニンマーは、エンリルを許せなかった。
彼に対する思いがまだ残っていたこともある。なにしろ彼らは、
「ニヌルタ」という息子までいる仲である。
ニンマーはこの事件に対していくら冷静に対処しようとしても怒りが収まらなかった。

 「ふしだらな男! 強姦は重罪よ。この犯罪行為がバレないとでも思ってるのかしら!」

 ニンマーは哀れなスドを抱きしめると、ニンマーの胸の中でただすすり泣きするだけだった。

 「もう泣くのはおやめ、スド。必ずあなたが納得する措置をとります。悲しむのはやめて、
安心して元気な子を産むのです!」

 ニンマーは自ら自身を落ち着かせてスドにそういった。

 「あのとき、私が兄にあげたあの薬草エキスのせいでこんなことが起こったのかしら・・・!?」

 ニンマーはエンリルだけを責められない気持ちも少し感じていた。

 しかし結論をいうと、この事件によって、
エンリルはアヌンナキ最大事件として裁判にかけられることになる

 次回はニビル星の「トゥルバ」という不思議な木についてです


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