2013年02月27日
アラルの死
マー:アヌンナキたちが乗る自家用スクーターのような乗物
プルセル:不思議な音を発す棒
エミッテル:アークチュール星の水晶から飛び散るスパーク
長寿の果実酒」と、「マンナ」と彼らが呼ぶ長寿のパン:長寿の果実酒と、「マンナ」と彼らが呼ぶ長寿のパンニビル星の王アヌだけが所有している、彼らの不死身同然の肉体次元を維持させているもの
ラーム:火星:地球とニビルの中間基地。イギギたちによって管理されている
エンキと共に地球にやってきた優秀なシェムの操縦士であり、
アヌ一族が治めている「ラーム」火星)というイギギたちの星の指導権をもっているのは、
エンキの操縦士でもある優秀な部下だった。
しかし、アンズは、あるとき地球着陸に失敗し、どこか誰も知らない地球上の、
ある湖畔に自分の自家用シェムを突っ込んで墜落した。
その知らせをうけてニンマーは、すぐにアンズが墜落した場所に駈けつけていった。
彼女は自分の「マー」に飛び乗って去った。
これはシェムとはまたちがうアヌンナキたちの乗物で、
まさに神さまたちは自分たち個々のチェリオット(二輪車)に乗って、
便利にも地球を当初は駈けめぐっていた。
もちろん、それらさまざま異なるマーの機能も
アヌンナキのヒエラルキーによって定められており、
その神さまの地上を走る二輪車があったことはあまり語りつがれない。
なぜかというと人間は、
「そんなものは自分たちには手に入らない」」
と頭から信じているからだ。それもそのはず彼らには、
“me(メ)”とよばれている高度なテクノロジーがあった、
ということを忘れてはならない。
さて、ニンマーが慌てて駆けつけていくと、アンズはすでに息をひきとっていた。
彼女は急いでその場に横たわっているアンズを抱き寄せて座り込み、
彼を腕に抱えると、自分の腰につけていた
「プルセル」という不思議な棒をアンズの心臓になんども当てた。
それは微細な振動音を発するアークチュール星の水晶でできていて、
アークチュリアンがもつ“me(メ)”の一種だった。
その先から飛び出る「エミッテル」と呼ばれているスパークを、
ニンマーは彼の心臓部や全体に飛び散らせた。
これはアヌンナキの中でもニンマーだけが、
特別にもっている貴重な治療用のme(メ)だった。
それはアークチュール星人の母から彼女がもらったものだった。
それをアンズに当てると信じられないような奇跡が起きた。
死んだはずのアンズが、大きな咳払い共に息を吹き返したのである。
ニンマーは自分が去る前にもうひとつアンズに治療を施した。
ニンマーはアンズの口に、アヌから特別にもらった「長寿の果実酒」と、
「マンナ」と彼らがよぶ「長寿のパン」をふくめ、食べさせた。
命を取り戻すことができたアンズはどうなったか、というと、
彼はまたニビルと地球間の中間ステーションとして機能しているラーム星に戻るはずだったが、
これもまたニンマーの暖かい配慮によって、当分は地球でゆっくりと養生することになった。
そのような特殊な、つまり人間からすると奇跡の癒しを
できるのが偉大なる女神ニンマーであり、死者をも復活させることができた。
そうして彼女が自分の愛するアヌンナキたちのために
あらゆる手を尽くして護り、救った。
だから彼女は、優秀なエンキの操縦士であるアンズの命を甦らせた偉業は
アヌンナキたちに称えられ、語りつがれた。
しかし、それにしても例外がなかったわけではない。
このこの墜落事件に関してもうひとつ大切なことが起きていた。
被害を受けたアヌンナキの神がもうひとりいたということである。
それは事実上あまり知られていないことであるが、
ニンマーは決してそれを無視することはできなかった。
その神とは、アヌによってニビルを追放されて、
誰よりもいち早く地球にやってきたエンキの義父アラルだった。
アラルは地球に到着してからは、アヌとは再び良好な関係にあった。
これは彼がアヌ一族の重要な地位を受け、アヌンナキの首都エリドゥに住みつき、
アヌンナキの任務を遂行し、活躍していた真っ最中の出来事だった。
アンズが操縦するシェムにいっしょに乗り合わせていたのが、アラルだった。
しかし残念にもアラルの場合はアンズとはちがい、
ニンマーが手を施せる状態ではもはやなかった。彼の体はバラバラになっていたからだ。
「これ以上、アラルさまを苦しめることなく、安らかに眠りにつかせてあげましょう」
とニンマーは呟いた。
アラルの亡骸は、ニンマーがアンズの部下のイギギたちに命令し、
ラームの高い山の頂まで運ばせた。そして崖の上にある洞窟の中に葬られた。
その洞窟の横にあった大きな岩でニンマーは洞窟の口を塞いだ。
「故郷ニビルで最期を迎えられなかった偉大なるニビルの王、アラルさま。
あなたによってニビルは救われました。
我々が必要とする金がある地球に、あなたは誰よりも先に辿りつかれました。
アヌンナキ代表の女神としてわたしは、あなたを地球の最古の英雄としてここに葬ります。
あなたの一族のイギギたちといっしょにラームというこの星で安らかに眠ってください。
私たちアヌンナキがこれからも、イギギと共に団結してやっていけますように。
父なる神アラルさま、どうか、黄泉の国から私たちをお守りください。」
ニンマーは叔父のアラルにそう祈りを捧げるとすぐに、
自分の腰に掛けていたポーチの中からビーム光線が出るワンドを取り出し、
アラルの肖像を洞窟の岩肌に一瞬にして彫り上げた。
その肖像にあるアラルの目線は、ニビルの方角を見つめていた。
アラルは南北朝に分かれたニビルが統一される前に、
北の王朝を栄えさせたアンシャガル一族の皇子として生まれた。
アヌとは母ちがいの兄弟同士であり、ニンマーの伯父である。
彼自身もまたニビル最高の学者であることから彼に対する崇敬の念を常に彼女は抱いていた。
冒険心旺盛なアラルが、不可能といわれてきた危険な打ち出し細工のブレスレットを
無事に通過して、地球を発見し、金を収集してニビルに送った。
このことは、ニビルの科学界にとっても驚きであり、また彼こそ
ニビルの英雄伝に残る存在であることをアヌは実は追放後も気になっていた。
アヌが、アンの血を強く受け継いでいるのは自分であり、
王位継承者は自分であるとアンの前に名乗りでたことによって、
アラルはニビルを追放されて地球に辿りついた。
アラルが最初に地球に降り立ち、ニビル星を救済するための金を発見した。
これは曲げられない事実としてアヌの娘ニンマーはアラルの功績を称えて、
どうしても後世に伝えたかったのだろう。
☆
ニビル星の女神は、地上に愛と美をもたらしました。
あなた方の祖先は、女神信仰を通して愛し、崇拝してくれました。
時代を経てそれは、マリア信仰へとその姿を変えましたが、
それにしても愛の種は永久に地上から消えなかったのです。
未来の地球でも生き続けます。
あなたも女神と遭遇するでしょう。
のちに「ニンフルサグ(聖なる山の女王)と呼ばれたニンマーは、
母なる女神のイコンであり、地上最古の女神なのです
イナンナは語る
次回は「ニンマーとエンリルの恋」