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【思想・哲学は古い世代】<衆院選>子育て世代は「政党より人」

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10/15(日) 10:01配信

毎日新聞

「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」が主催した「保活」イベント=東京都千代田区の衆院議員会館で2017年10月4日、中村かさね撮影

 「保守とリベラルのイデオロギー論争は、もうたくさん」。新党が入り乱れる混沌(こんとん)とした選挙戦だが、子育て世代の有権者は候補者が訴える政策の中身を見極めようとしている。待機児童問題に取り組むある市民グループを追った。【中村かさね/統合デジタル取材センター】

【図でわかりやすく】3極の子育て支援公約は?

 ◇無償化より待機児童解消を

 「もう、だまされません」

 東京都武蔵野市の会社員、中井いずみさん(41)は記者に言った。3歳の次男は認可保育所に3年連続で落選した。実質2歳児までの認証保育所に、3歳児となった今も残留する。次男のクラスには、同じように認可に落選した子どもが6人いる。「来年はどうする?」。他の保護者と顔を合わせるたびに話題は自然とそこにいく。

 自民党は幼児教育・保育を無償化し、2020年度末までに32万人分の保育の受け皿確保を公約に掲げている。昨年の参院選では「待機児童の受け皿を10万人分増やして50万人分確保する」とぶち上げ、今年度末までの待機児童ゼロを目標に掲げていた。ところが今年6月に、待機児童の解消目標を20年度末まで先送りしたうえで、22年度までに32万人分の受け皿を整備する新プランを発表していた。今回の衆院選では、この32万人分の整備を2年前倒しし、20年度までにやると訴えている。

 一方、希望の党も無償化や「待機児童ゼロの義務付け」を、立憲民主党は保育士給与引き上げを公約に掲げる。公明党と共産党も、保育や幼稚園の無償化を訴え、各党の訴える内容に大差はない。

 安倍晋三首相が衆院解散の9月28日に語った「無償化」の3文字に、中井さんはめまいを覚えた。近所に新設されるはずだった認可保育所は、住民の反対などで2年連続で先送りされ、来春も認可に入れる見込みは薄い。

 「上級生から刺激を受けたり集団保育で社会性を身につけたりできる施設で、のびのび育ってほしい。保育園はもうあきらめて幼稚園に預けます」と話す中井さん。預かり時間が短い幼稚園では、夫婦で協力したり外部のサポートを使ったりしても仕事に支障が出るだろう。

 「ただでさえ少ない枠を奪い合っているのに、無償化されたら競争が激化するだけ。無償化より受け皿確保が先。順序が逆じゃないですか」。保守やリベラル、3極など次の政権の枠組みばかり語られる選挙に違和感を抱いている。

 ◇関心の有無は政党に関係なし

 「この選挙を逆手に取りましょう」。

 10月4日に東京都内で開かれた「保活」イベントで、天野妙さん(42)が100人を超す参加者に呼びかけた。「自分の選挙区の候補に、子育て施策を質問してみてください。財源は? 優先施策は? 相手がたじたじとなったら、たいして考えていない証拠。それでも質問すれば、候補はきっと考えるようになるはずです」

 イベントの主催は今年2月に発足した市民グループ「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」。天野さんが代表で、中井さんも参加する。活動に加わるメンバーは地域も職業も政党支持もまちまちだ。仕事や育児の合間にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でつながり、情報を共有して会議を進める。データや資料を作成する人、広報担当、表に出て発言する人--。自然と役割分担も生まれた。

 国会議員への陳情活動を続ける中で分かったこともある。「政党に関係なく、共感してくれる人もいればそうでない人もいる。でも子どもを連れて会って話せば、聞く耳を持たない政治家はいません」(天野さん)

 活動に協力してくれた政治家は、与党にも野党にもいた。その一人が、週刊誌報道を機に民進党を離党した山尾志桜里氏だ。天野さんは「子育て支援に関心を持ち、しっかり動いてくれる人なら政党やプライベートは問題ではない」と強調する。

 ◇専門分野を生かして知恵を結集

 旧民主党政権も安倍政権も、待機児童解消に向けて受け皿を積み上げてはきた。だが、保育所が増えれば預けて働きたい女性も増える。「待機児童がゼロになる日は本当に来るのか」。誰もが感じる疑問に真正面から取り組んだメンバーもいる。

 政府が見込む保育需要は、実際に保育所に入所申し込みをした子の数や25~44歳の女性就業率を根拠とする。

 大手建設会社に勤める井上竜太さん(41)はここに目を付けた。

 「申し込む前にあきらめている人も大勢いる。女性全体の就業率は緩やかな伸び方だが既婚の適齢女性の就業率は急増中。32万で足りるわけがない」。過去の数字をたどって確信を深めた井上さんは、他のメンバーにも疑問をぶつけてみた。

 大学で研究職に就く女性メンバーが、国や研究所の資料をひっくり返し「もし保育園に入れるなら働きたい」という潜在需要も加味して再計算すると、「最低でも受け皿は56万人分は必要」という結論を得た。野村総合研究所や京都大の研究では80万~90万という数字が示されている。

 井上さんは、通勤や子どもの寝かしつけ後の時間を使って「56万」についてリポートを作成。「実際には56万では足りないはず。80万くらいが現実的な数字だと思う」と指摘し、こう強調する。「0~2歳はもちろん、3~5歳でも障害や貧困で幼稚園にも保育園にも行けない子がいる。入りたくても入れない子どもをゼロにすることが優先されるべきです」

 ◇政治に悲観していない

 「めざす会」では、与野党の待機児童対策プロジェクトチームや外部の勉強会にも参加し、時には研究者にも意見を求めてきた。国会議員への陳情活動も積極的に続けている。

 ジャーナリストで2児の母でもある治部(じぶ)れんげさんは、メンバーたちの活動について「外から声を張り上げて政治と対立するのではなく、顔が見える距離で子どもと政治の接点を作った」と称賛する。「政治の側にも『日本死ね』ブログや1億総活躍のスローガンで、保育問題が政治課題だという土壌ができてきた。子育て施策は与野党の対立項目ではなくなっている」と指摘する。

 保活で辛酸をなめた中井さんも政治に悲観はしていない。「保守やリベラルといったイデオロギー論争は、もうたくさん。小選挙区は人で選びたい」。どの政党でも、子育て支援策に関心がある議員が増えれば、社会が変わるという手応えを感じている。

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最終更新:10/16(月) 0:59
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