9/25(月) 8:00配信

御来光が鳥海山山頂の岩肌を照らした途端、眼下の日本海に巨大なシルエットが出現した。ピラミッドのような端正な三角形は、一辺が数十キロにも及ぶ
雨上がりの晩夏の夜空。鳥海山の頂は満天の星々に包まれていた。ゆっくりと闇が薄れ始め、朝日が山頂の外輪山を紅に染めると、下界の日本海に巨大なピラミッドが現れた。
【地図】山形県と秋田県にまたがる鳥海山
「影鳥海」と呼ばれる雄大な光景。海岸から一気に立ち上がった独立峰が朝日に照らされ、二等辺三角形の影を海に落とした。朝早く、東の空にほとんど雲がない時にしか拝めない。
「御来光と影鳥海は、日々精進する人たちにしか見ることができません」。山頂の大物忌(おおものいみ)神社の境内にある山小屋を管理する今野安三さん(64)が言う。この世ならぬ不思議な影絵だったが、身も心も清められるような思いがした。
目を凝らすと影の中に漁港が見える。「口之宮」と呼ばれる里宮がある山形県遊佐町の吹浦(ふくら)地区。影はやがて小さくなり、山岳信仰が息づく麓の集落に一足遅い日の出が訪れた。
文と写真 写真部・庄子徳通
[メモ]鳥海山は標高2236メートル。東北では福島県の燧ケ岳(ひうちがたけ)(2356メートル)に次いで高い。「影鳥海」が望めるのは日の出後の30~40分だけ。山頂(遊佐町)へは象潟登山口から片道約5時間。大物忌神社御室参籠所(おむろさんろうじょ)(山小屋)は7月上旬から9月中旬ごろまで開いている。
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河北新報