毎日新聞 2/5(日) 1:12配信
【ロサンゼルス長野宏美】中東・アフリカの7カ国からの入国を一時禁止する大統領令について、米西部ワシントン州シアトルの連邦地裁は3日、一時差し止めを命じる仮処分の決定を出した。命令は全米に適用され、即時効力が及ぶが、トランプ政権は決定を不服として争う姿勢を示しており、混乱が続きそうだ。連邦地裁の差し止め命令を受け、米国務省は4日、声明を出し、約6万人に上る7カ国出身者の査証(ビザ)取り消しを撤回し、有効なビザを所持していれば入国を認めるとの認識を示した。欧米や中東などの航空各社は米当局からの通知を受け、入国禁止となっていた乗客の搭乗を再開した。
米メディアによると、入国禁止の大統領令を巡っては、州政府や市民団体などが各地で少なくとも40件の訴訟を起こしている。大統領令の全面的な差し止めを命じる判断はワシントン州の決定が初めて。
ワシントン州は1月30日、この大統領令は「人種や宗教による差別を助長し、違憲だ」として州政府としては初めて連邦地裁に提訴した。州内に本社があるネット通販大手アマゾンや米マイクロソフトなども企業活動に打撃だなどとして訴訟を支援し、中西部ミネソタ州も原告に加わった。
シアトル連邦地裁のロバート判事は決定で「大統領令が雇用や教育、企業活動などに取り返しのつかない損害を生じさせている」として、即時停止を命じた。
これに対しホワイトハウスは声明を出し、「司法省が執行停止を求め、大統領令を守る」と争う姿勢を明らかにした。
トランプ氏は2月4日、決定についてツイッターに「我が国から法治を奪い去るもので、ばかげている。(上級審で)覆されるだろう」と投稿した。
法律上は、すでに米全土に仮処分の効力が及んでいるため、連邦政府は従わなければならない。米CNNはトランプ政権への「大きな打撃だ」と伝えている。
連邦政府は混乱を避けるため、即時抗告して裁判所に素早い対応を求める構えだが、憲法判断にかかわるため、決着までは長期化する見通しだ。
大統領令の差し止め判断は過去にも出た。一部の不法移民の強制送還を一時的に猶予し、労働資格を認めるオバマ前大統領の大統領令を巡って、南部テキサス州の連邦地裁が2015年2月に全米での執行停止を命じ、昨年6月には最高裁で執行停止が維持された。
最終更新:2/5(日) 6:17