転載:今日のニュースと話題とエトセトラ https://t.cll-j.com/funding-of-basic-income/
2016.05.24 話題 IG
最近、「ベーシックインカムっていいんじゃないか?」と結構本気で思いだしているので、ベーシックインカムを実現する上でまず誰もが気になる「財源はどうするの?」という点についてざっくりと計算してみました。 財源について計算してみるベーシックインカムにおいて「財源をどうするのか」という議論は避けては通れないものですが、財源については研究者たちがいろんな考えを示していて、その中でも「所得税を財源に充てる」という案が主流となっているといいます。
ベーシックインカムで毎月国民一人あたり何万円を支給するのか?所得税を何%にするのか?その辺の数字についてはまだまだ議論の余地があるのであくまで仮定の話でしかありませんが、ざっくり計算してみたところ、少なくとも財源の確保は十分可能だろうなという結果が出たので、参考までに計算内容を記事化しておきます。
1.年間の給付額について全国民に一律に支給するという場合、支給の対象者は1億2,700万人になります。で、これがベーシックインカムの王道的な考え方なんだろうと思います。でも個人的には子供には支給する必要無いんじゃない?と思うんですよね。
で、まあその辺の理由についてここで述べていくと話がそれてしまうので今回は割愛して、ここでは「18歳以上の全国民に一律に支給」という前提で考えたいと思います。
給付対象者日本国の現在の18歳未満の人口は…ちょっとWeb検索でどう調べたら出てくるのか分からず、見つけることができたのは以下のデータになってしまったんですが。
リンク 第1節 人口|平成26年版子ども・若者白書(全体版) – 内閣府
年齢に微妙な誤差はありますが、明転させてあるところの人数を合計すると 2,243万人。全人口 1億2,700万人からこの 2,243万人を差し引くと、給付対象者はおおよそ 1億500万人ぐらいといったところ。
必要な財源の額1億500万人に対して毎月現金支給するとなれば、「いくら支給するのか?」はかなり大きな問題です。で、よく目にするのは「月8万円支給」という案。でも個人的には「月10万円支給」の方がいいんじゃないかなあと感じています。可能な限り多い方が良いと、そんな風に思っています(この点についても細かい話はここでは割愛)。
とりあえず月10万と月8万の両方で計算してみると、必要な財源額は…
1人当たり月10万円支給なら、月間10兆5000億円、年間126兆円 1人当たり月8万円支給なら、月間8兆4000億円、年間100兆8000億円 年間の給付額のまとめ支給する対象者を全体にするか一部を除くか、毎月の給付額をいくらにするか、そういった条件によっていろいろ変わってはきてしまいますが、とりあえずここでは18歳以上の全ての国民に毎月10万円を支給すると仮定して考えて、そうするとおおよそ年間126兆円の財源が必要になってくる、ということが分かりました。
2.財源の確保について財源の確保についても、ベーシックインカムという制度の中身を具体的にどうするか、たとえば医療費の負担割合とかそういったものについてはどう考えるか、それによって財源の確保についての考え方もいろいろ選択肢が出てきます。
個人的には、ベーシックインカムの導入によって体の不自由な人とか病気で苦しんでいる人とかが今まで以上に経済的に苦しむようなことになっては本末転倒だと思うので、ざっくり言えば「社会保障のうち、年金以外はなるべくいじらない」ような形でのベーシックインカム導入がベストなんじゃないかと思っています。
現在の社会保障給付費現在、社会保障にかかる費用は年々増加していて、国の借金がどんどん増えていってしまっているという話がよく聞かれます。
具体的には社会保障の給付費は2014年で年間115.2兆円。内訳としては「介護・福祉その他が22.2兆円」「医療が37兆円」「年金が56兆円」となっています。
所得税を財源にする場合の試算現在、日本人の国民総所得(給与所得・申告所得、≠GNI)は年間約350兆円とのこと。
参考 長期経済統計 国民経済計算 – 内閣府
(ちょっとここ自信ないです。上記リンクページ内の「名目国民所得」の直近の数字を参考にしましたが、その項目がここで必要としているものを表している項目なのか、ちょい不安)
所得税財源論ではよく、現行の最高税率45%の累進課税率を、所得の多寡に関係なく一律みんなに45%で固定する、という案が考えられています。
ただここも個人的には「45%」という、パッと計算しづらい税率というのはいろんな意味で良くないと思っているので、一律40%か、できれば30%に抑えられたらいいなと思います。
一律40%の所得税をかけた場合、年間140兆円の税収 一律30%の所得税をかけた場合、年間105兆円の税収現在の所得税での税収は約15兆円なので
参考 税制について考えてみよう : 財務省
その15兆円を丸っと差し引いたとしても、「一律40%の所得税をかけた場合」であれば、必要な財源額(月10万円支給)年間126兆円に対し、税収額(一律40%)年間125兆円になるので、誤差は1兆円しかありません。
1兆円の誤差なんて、所得税率か毎月の給付額のどちらかをちょっといじればすぐ解決する問題ですし、でなくても現在最も大きな支出割合となっている年金が消えたり、それから生活保護費が大きく抑制されたり、などといった副次的な要素を考えれば、問題視するような誤差ではないと言えそうです。
財源の確保についてのまとめ所得税を財源に、一律で現在より高い所得税率を課せば、ベーシックインカム実現のための財源は十分確保できそうです。
では実際に所得税率をたとえば一律40%とした場合、我々庶民の暮らしぶりはどうなってしまうのか?あまりに高い所得税率によって逆に生活が苦しくなってしまうのではないか?という不安に対して、試算してみます。
一般家庭が所得税率40%になるとどうなるか所得税率が40%だなんて、これまではお金持ちな人にしか課されないような税率であって、一般のサラリーマンからしてみれば「40%も徴収されちゃったら、手取り額とかヤバいんじゃない?」と漠然とした不安を感じるかもしれませんが、実際は大丈夫そうです。
以下では仮に、所得税率は40%、毎月の支給額は10万円、として計算してみます。
世帯年収300万円の場合妻が専業主婦であろうとパートであろうと関係なく、夫婦合わせた世帯年収が300万円であれば、所得税40%を差し引くと180万円が手元に残ります。
ベーシックインカムで支給されるのは月10万円 × 12ヶ月 × 2人 = 年間240万円になるので、
180万円 + 240万円 = 計420万円が手元に残ることに所得税率が今より高くなろうと、そもそも夫婦二人が生きているだけでその家庭には毎月20万円の現金が支給されるのですから、特に低所得世帯においては生活ぶりが大きく改善されるであろうことは目に見えています。
世帯年収400万円の場合400万円から所得税40%を差し引くと240万円が手元に残ります。
すると
世帯年収400万円家庭でも明らかにこれまでより得られるメリットが大きいです。
世帯年収700万円の場合700万円から所得税40%を差し引くと420万円が手元に残ります。
すると
年収1千万円を超えるような高額所得者や、それから単身者にとっては、実質所得が減る傾向があります。でも特に単身者の負担増については、少子高齢化はこれからの世の中において恒久的な問題であろうことは明らかなので、若者の結婚を後押しするという意味でむしろ建設的な制度改革になるのではないでしょうか。
また数千万円を超える高額所得者の場合、税率が一律40%というのは現行の最高45%の税率に比べ低いものになるので、その意味では「中途半端な高額所得者は負担増になるが、それ以上の高額所得者にとっては税負担が減る」という形になるかもしれません。
ただ現実には現行制度下で存在している様々な控除をベーシックインカム導入時には廃止するような方向に動くと思うので、やはりすごい高額所得者にとっても、多少の負担増があるかもしれません。この辺はちょっとお金持ちの人が現行制度下でどういう控除を受けているのかよく知らないので正確なことは分からないです。
おわり「ベーシックインカム」と検索するとすぐに検索候補として「ベーシックインカム 財源」という表示が出てきます。多くの人が気になるであろう制度ですが、誰もが「でも財源どーすんの?」とすぐに財源の問題が引っ掛かるようです。
しかし今回簡単に試算してみたところ、どうも財源に関しては少し税制を変えればすぐに確保できそうだということがわかりました。というか、この記事書きながら改めていろんなサイトを開いているうちに、どうもベーシックインカムについての議論において「理論的には実現可能」というのが大方の見方として既に出ているようです。
財源以外にも懸念されている事項はいくつかありますが、究極的に言ってしまえば一番の大きな問題点は「本当にそんなことできるの!?」という、あまりに大きな変化をもたらす制度故のどこか漠然とした不安が大きいように思えます。
なので今後は、否定論者が語るその「漠然とした不安」の中身について一つ一つ、その不安を潰していけるような記事を書いていってみようかな、と思います。