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ブラック企業の内部改革~まつりさん過労自殺1年、「電通」その後―

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日本テレビ系(NNN) 12/27(火) 0:13配信

 大手広告会社・電通の元社員が過労自殺してから1年。命日の25日、母親が寄せた手記には娘を失ったやるせなさがつづられていた。電通は、行政から異例の強制捜査を受けたが、長時間労働は電通だけでなく、他の企業にも広がっていた。


■大手広告会社「電通」の新入社員だった高橋まつりさんが亡くなり、その原因が長時間労働だとして労災と認定された問題。

■まつりさんは、静岡県内の高校を卒業し、東京大学に進学。勉強にもスポーツにも正面から取り組む、真面目な生徒だったという。最愛の娘を亡くした母親の手記には、悲痛な胸の内が綴られていた。

■母・幸美さんの手記(※全文は記事後半にあり)

「まつりの命日を迎えました。去年の12月25日、クリスマス・イルミネーションできらきらしている東京の街を走って、警察署へ向かいました。前日までは大好きな娘が暮らしている、大好きな東京でした」

「あの日から私の時は止まり、未来も希望も失われてしまいました。息をするのも苦しい毎日でした。朝、目覚めたら全て夢であってほしいと、いまも思い続けています」

「あの時、私が会社を辞めるように、もっと強く言えば良かった。母親なのにどうして娘を助けられなかったのか。後悔しかありません」

■厚生労働省から“異例の強制捜査”を受けた電通。変化はあったのだろうか。

■電通では、夜10時以降の残業は原則禁じられ、現在、本社ビルは一斉消灯されている。他にも、来年からすべての社員に「年間10日の有給休暇取得」の義務付けなども発表している。

■こういった改善策について、複数の電通現役社員は日本テレビの取材に対し「自分の自由な時間ができた、プライベートに費やせる」「若手の意見が尊重されたりするようになった」と評価する一方で、「業務量が変わらないのに強制的に22時消灯になって大変。朝早く来て仕事をしている」と弊害を指摘する声もあった。

■今回、問題となった“違法な残業”や“長時間労働”。しかしそれは、「電通」一企業に限ったものではない。

■3年前、大手電機メーカー「三菱電機」に研究者として就職した男性。長時間労働でうつ病を発症し、先月、労災と認定された。男性の場合、入社から7か月後の新しい研究が始まった頃から残業が増えたという。

■三菱電機元社員(31)「深夜残業もあるし、休日出勤もあって、休めるのは月2日ぐらいかなって」「(人事に)サービス残業だと言ったけど、『(残業は)うちの会社では自己啓発なんです』みたいなことを」

■三菱電機は男性の件について、日本テレビの取材に対し、「労災認定を受けた事実は真摯(しんし)に受け止めています。今後も適切な労働時間管理を徹底してまいります」とコメントしている。

■まつりさんの死をきっかけに見直され始めた、日本人の働き方。

■母・幸美さんの手記「人は、自分や家族の幸せのために、働いているのだと思います。仕事のために不幸になったり、命を落とすことはあってはなりません」「日本の働く人全ての人の意識が変わって欲しいと思います」


◇母親・幸美さんの手記全文

手記 高橋幸美
2016年12月25日

まつりの命日を迎えました。
去年の12月25日クリスマス・イルミネーションできらきらしている東京の街を走って、警察署へ向かいました。嘘であってほしいと思いながら・・・。前日までは大好きな娘が暮らしている、大好きな東京でした。

あの日から私の時は止まり、未来も希望も失われてしまいました。息をするのも苦しい毎日でした。朝目覚めたら全て夢であってほしいと、いまも思い続けています。まつりは、あの日どんなに辛かったか。人生の最後の数か月がどんなに苦しかったか。

まつりはずっと頑張ってきました。就職活動のエントリーシートの自己PRの欄に、「逆境に対するストレスに強い」と書いていました。自分が困難な境遇にあっても絶望せずあきらめないで生きてきたからです。10歳の時に中学受験をすることを自分で決めた時から、夢に向かって努力し続けてきました。

凡才の私には娘を手助けできることは少なく、周囲の沢山の人が娘を応援してくれました。娘は、地域格差・教育格差・所得格差に時にはくじけそうになりながらも努力を続け、大学を卒業し就職しました。

電通に入ってからも、期待に応えようと手を抜くことなく仕事を続けたのだと思います。その結果、正常な判断ができないほどに追い詰められたのでしょう。あの時私が会社を辞めるようにもっと強く言えば良かった。母親なのにどうして娘を助けられなかったのか。後悔しかありません。私の本当の望みは娘が生きていてくれることです。

まつりの死によって、世の中が大きく動いています。まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、まつりの24年間の生涯が日本を揺るがしたとしたら、それは、まつり自身の力かもしれないと思います。でも、まつりは、生きて社会に貢献できることを目指していたのです。そう思うと悲しくて悔しくてなりません。

人は、自分や家族の幸せのために、働いているのだと思います。仕事のために不幸になったり、命を落とすことはあってはなりません。まつりは、毎晩遅くまで皆が働いている職場の異常さを指して、「会社の深夜の仕事が、東京の夜景をつくっている」と話していました。まつりの死は長時間労働が原因であると認定された後になって、会社は、夜10時以降消灯をしているとのことですが、決して見せかけではなく、本当の改革、労働環境の改革を実行してもらいたいと思います。

形のうえで制度をつくっても、人間の心が変わらなければ改革は実行できません。

会社の役員や管理職の方々は、まつりの死に対して、心から反省をして、二度と犠牲者が出ないよう、決意していただきたいと思います。そして社員全ての人が、伝統を重んじることに囚われることなく、改善に向かって欲しいと思います。日本の働く人全ての人の意識が変わって欲しいと思います。

以上


◇電通のコメント(日本テレビの取材に対して)

改めてご冥福をお祈りいたします。ご遺族と協議中のため、回答は控えさせていただきます。


◇電通労働組合のコメント(日本テレビの取材に対して)

電通労働組合は、これまでも長時間残業を問題視し、長年にわたって、残業時間を減らすことを目指した活動や、社員の心身の健康を守る活動を行ってきました。

しかし、このような活動を行ってきた中で、高橋さんが亡くなったこと、労災と認定されたことについて、大変心を痛めており、非常に重く受け止めております。一周忌に際し、改めて御冥福をお祈りいたします。

現在、会社が進めている夜10時以降消灯を含めた各種施策についても、その効果が有効に作用するか厳しく注視するとともに、現場で働く社員に新たな皺寄せや負担が発生しないかという観点からも注意を払い、会社と協議を行っています。

このようなことが再び起きることがないよう、電通労働組合は、今後も引続き、組合員の健康と安全を守るための活動に取り組んでいきます。


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