東京都の小池百合子知事が年明けにも、石原慎太郎元知事(84)に「公開聴取」を再要請する方針を固めた。豊洲新市場の「盛り土」未実施問題で、当時の最高責任者である石原氏には「公開ヒアリング」が求められていたが、石原氏は「体調不良」などを理由に拒否してきた。だが、都議会公明党が「自民党と決別」したことで、石原氏がこれ以上、無責任に逃げ回れば「百条委員会」設置も現実味を帯びてきている。石原氏は今度こそ、男らしく「ケジメ」をつけるのか。
「石原氏は最近、執筆活動や講演活動を本格化させている。体調も問題ないはずだ。公開ヒアリングに応じるよう、断固求めていく」
都庁幹部は、夕刊フジの取材にこう語った。9月上旬に発覚し、都政への信頼を失墜させた「盛り土」問題は、決してうやむやにできない。
都の報告書によると、専門家会議が2008年7月、敷地全体に盛り土をするよう提言したことを踏まえ、都は09年2月に「盛り土」の実施方針を決定し、これを石原氏が決裁していた。
ところが、10年11月の基本設計に関する仕様書では、地下部分に地下空洞を設ける「モニタリング空間」が記載。そして、都の担当部局「中央卸売市場」で11年8月に開かれた担当部課長会で、都の決定に反して盛り土をしない方針が決まったという。
一連の時期は、まさに石原氏の3期目(07年~11年)にあたる。
問題発覚直後、石原氏は「事実関係を明らかにする検証を行う場合は全面的に協力する」と語っていたが、その後、体調不良などを理由に、小池氏が求めた公開ヒアリングを拒絶した。
都は仕方なく、▽知事として豊洲新市場問題に関し、どこまで把握していたか▽知事としての責任をどう考えるか-といった質問状を送り、書面での回答を求めた。
しかし、石原氏が提出したのは「記憶にない」「わからない」「思い出せない」という言い訳がズラリと並んだ、事実上の「ゼロ回答」だった。1300万都民をバカにしているのか。
これに対し、小池氏は責任の取り方を自ら示した。
「都民や関係者に『盛り土』問題で心配をかけたケジメ」として、自身の給与を3カ月間、5分の1減額することを決定した。知事就任直後、「都政改革の姿勢を示す」として、年収約2900万円の給与を約1450万円まで半減させたが、さらに減らしたのだ。
2017年度予算編成に向けたヒアリングでも、小池氏は19日、早期移転を求める築地市場協会の伊藤裕康会長と面会し、「多大なご迷惑をかけていることについて、改めておわび申し上げたい」と陳謝した。
前出の都庁幹部は「都は来年度の予算要求で、『盛り土』問題の関連費用として、地下水のモニタリング調査費など計2億5000万円を計上する方針だ。このほか、移転延期に伴い、水産卸の損失額は『1カ月間で4億3500万円』という試算もある。莫大(ばくだい)な損失を発生させた石原氏には、公開の場で説明する責任があるはずだ」と語った。
石原氏の「公開聴取」を間接的に後押しするのが、都議会公明党が議員報酬削減案をめぐって、「都議会のドン」こと内田茂都議率いる都議会自民党と決別したことだ。
都議会は定数127で、石原都政を支えた都議会自民党は60人。都議会公明党(23人)が「小池氏支持」に大転換したことで、石原氏が公開ヒアリングを拒否し続ければ、議員の過半数の賛成で設置できる「石原氏の百条委員会」の可能性も出てきたのだ。
百条委員会は、関係者の出頭や証言、記録の提出を請求できる強い調査権を持ち、地方議会の「伝家の宝刀」と言われる。正当な理由がなく、出頭や証言を拒否したり、虚偽の証言をした場合は禁錮刑や罰金刑の対象となる。
心配された石原氏の体調も回復している。
石原氏は8日、都内で開かれた盟友・亀井静香衆院議員の政治セミナーに出席し、何と約1時間にわたって亀井氏と対談した。石原氏は、安倍晋三首相とトランプ次期米大統領が会談する直前、菅義偉官房長官に連絡を取り、「日本の航空産業の技術の高さをトランプ氏側に伝えるべきだ」と伝えたことを披露した。
執筆活動も精力的だ。
産経新聞に19日掲載されたコラム「日本よ」では、「男女を問わずに人間にとっての最高の美徳とは己の生命やそれに近い代償を厭わずに払っての献身に他なるまい」と記し、セリーグ優勝した広島の黒田博樹投手についても、「久し振りに人間なるものを、男として信じられるような気がしていた」と書いている。
ぜひ、石原氏には、都政の元最高責任者として公開ヒアリングに堂々と臨み、「男として信じられる」「最高の美徳」を示してほしい。
夕刊フジ 12/22(木) 16:56配信