1億円に減資で「中小企業化」 名より実を取る吉本興業の狙い
日刊ゲンダイ 7月31日(金)9時26分配信
「笑いの総合商社」がまさかの「中小企業」となる。9月1日付で吉本興業が事業の元手となる資本金を約125億円から1億円に減資することが判明。資本金が1億円以下になった場合、「中小企業」とみなされるため、法人税や法人事業税の負担を軽くする狙いがあるという。
今年5月、同じ手法で経営再建中のシャープが税制上の優遇措置を狙って実施をもくろむも、政府などから批判の声が噴出し、大企業とみなされる5億円の減資にとどめたという“前科”があるが、カネには何かとうるさいイメージの吉本。同社の広報部は「中長期的な投資を目指した戦略の一環。(資本金は)これまでやってきたプロジェクトやイベントに費やしていく」というが、どんな狙いがあるのか。
「シャープは税金を安くするのが狙いでしたが、今回の吉本興業の場合、税制優遇というよりは赤字の解消が一番の目的だと思います。資本金を取り崩した分だけ赤字も減るので、手っ取り早い。大手になると、資本金はため込むよりも投資に利用する企業も多いので、決して珍しい話ではありません。特に吉本興業の場合、生産しているものの中心は『笑い』という形のないもので、赤字になったり中小企業になったからといって『お笑い』がなくなるワケではないので、影響は少ない。それだけに、減資という選択も思い切りやすかったと思います。今回の減資で芸人さんのギャラが減るというようなこともないでしょう」(東京商工リサーチ情報本部長の友田信男氏)
吉本広報部も「今回のことが原因で芸人のギャラは増えたり減ったりすることはない」と話しているが、2010年の上場廃止以降、取引先への支払い猶予要請やタレントへの出演料遅配が一部で報じられたこともある。
今年4月には「ワッハ上方」(大阪府立上方演芸資料館)や「NMB48」専用劇場などが入る自社ビル「YES・NAMBA」の売却を発表。当時、売却理由について「中長期経営戦略に伴う事業集約の一環」と説明していたが、果たして経営は大丈夫なのか……。
“ケチ本”の異名が定着しているおかげで、大幅減資によるイメージダウンがないのは救い。名ばかりの大企業より“実”を取った吉本らしい企業戦略のようだが。