テーマ:資本主義
まずは、多くの方にとってはあまり聞きなれない言葉であるかもしれないベーシック・インカム(BI)について、ウィキから簡単に。
「ベーシックインカム(basic income)とは最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給するという構想[1][2][3][4]。
基礎所得保障、基本所得保障、国民配当[5]とも、また頭文字をとってBIともいう。」
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今年の夏、オランダのある都市が試験的に無条件のベーシックインカム制度を開始することに
A Dutch City Will Start Experimenting with Unconditional Basic Income This Summer
【Fururism】http://www.futurism.com/links/view/a-dutch-city-will-start-experimenting-with-unconditional-basic-income-this-summer/ より翻訳
概要
オランダの都市のユトレヒトは、ベーシックインカムが現実の社会でどのような影響を与えるかを確認しようと考えている。
まとめ
• 何らかの社会福祉の給付金を受給している人は、アシスタントや社会的アシスタント、住宅手当、子供手当てなど複数の手配を行わなければならない事態に直面することが多い。このような各状況にはコントロール要因があるため、手当てを受給している人間には社会的流動性がほとんどなくなる。
(訳注:つまり現行の細かい規制のある福祉制度の下では、いったん社会・経済的位置が下がると、そこから上がることが難しい、というような意味です)
• 市がユトレヒト大学と提携して行うこの実験では、何らかの福祉的手当てを受給している人たちを異なる管理制度に配置する。
たとえば、一つのグループには補償と余裕分としての対価が与えられ、もう一つのグループにはルールはどのようなものも一切ない、ベーシックインカムが与えられ、そして最後にはもちろん、対照群(訳注:研究の比較のために、変化の与えられない集団)として現行の規則が適用されるグループがある。
• 同市はまた、ナイメーヘンやヴァーヘニンゲン、ティルブルフ、フローニンゲンなどの他の市政機関に対しても、同様の試験的試みの実行を行うことに関して話し合うことを検討中で、今年の第二半期に開始することを希望している。
(翻訳終了)
この件に関して、さらに詳しい情報は、英語ですがこちらのインディペンデント紙の記事がお勧めです。
Dutch city of Utrecht to experiment with a universal, unconditional 'basic income'
http://www.independent.co.uk/news/world/europe/dutch-city-of-utrecht-to-experiment-with-a-universal-unconditional-income-10345595.html
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オランダはこれからですが、カナダでも以前に、試験的にベーシックインカム制度が導入されたことがあるようです。
みんなが無償でお金をもらえる街(カナダでの4年に渡るベーシックインカム制度の実験)
The Town Where Everyone Got Free Money
2015年2月10日【Films for action】http://www.filmsforaction.org/articles/the-town-where-everyone-got-free-money/より概要を翻訳
概要
カナダ政府は1974年から1979年にかけて、同国マニトバ州ドーフィン全体で、試験的にベーシックインカムを導入した。Mincomeと呼ばれる試験的試みである。
北米では初めての試みであった。
この4年間の間、最も貧しい層の住民には、文化的な生活が出来る程度に毎月、資金が与えられ、もっと働いたものにも相応の報酬を与えた。
ベーシックインカムが導入されていた間は、貧困に関連する問題が消えうせていた。
病院へ通う患者数は減少し(入院者数8.5%減少))、精神的疾患も改善の兆しをみせ、高校の卒業率が上昇していたのである。
BI(ベーシックインカム)によって労働意欲を低下することがないような工夫が施されていたためもあり、事前に懸念されていたような労働者不足も起きなかった。
しかし実験の途中に景気が低迷して失業率が上昇し、途中からはこの制度を維持する分の予算がなくなってしまった。
(翻訳終了)
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なぜこれほど多くのオランダ人がパートタイムで生活していけるのか
Why so many Dutch people work part time
5月11日【Economist】http://www.economist.com/blogs/economist-explains/2015/05/economist-explains-12より概要を翻訳
オランダ人は、世界の中でも最も住みやすい国の一つに挙げられ、ユニセフによると世界でも子供が最も幸せな国の一つとされているが、これは質のよい生活や元々気質のいい性格、仕事に対してリラックスした態度なども原因の一部であろう。
なにより、オランダ人の労働人口のうち半分以上がパートタイムでしごとをしている。EU全体では、男性8.7%、女性322.2%だが、オランダでは男性26.8%、女性の76.6%がパートで仕事(週36時間以内)をしている。
理由:
・第二次大戦中、他国よりも戦地に赴いた男性は少なく、そのためアメリカやイギリスのように女性が工場で働く必要がなかった。
・国が豊かであるため、一家に収入源が二つも必要ない。
・80年代までキリスト教文化が色濃く、女性が家で子供と過ごせるように考慮されていた。
しかし80年代後半に国は女性を労働市場に登用しようと試みるも、晩御飯の時間には女性は自宅にいるべきだという文化的風潮が強く、パートタイムでもフルタイムと同様の法的地位を与えようと国も懸命に努力した。
2000年、男女を問わず、仕事をパートタイムへ変更することを要求する権利が与えられた。
25-64歳の雇用された女性のうち、パートタイムで勤務している女性の割合
(注: ここでいうパートタイム雇用とは、通常30時間以内の勤務時間のものを指す。
日本のデータは、実際の労働時間に基づいたものであるが、週35時間より少ない者をパートタイムとして定めている)
(グラフ http://www.voxeu.org)
(翻訳終了)
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【コメント】
普通に考えて、国が豊かとされているのに、週に40時間働いても生活に充分なお金が稼げないという時点で、その国の経済システムには根本的な問題があると言えるでしょう。
ましてや裕福な国とされているイギリスや日本、アメリカなどで、過労死やあまりにも極端に長い労働、フルタイムで働いても生活に対するなんらかの補助が必要なのもおかしいですよね。
それを資本主義や弱肉強食な世界、よくわからないが世の中そういうものだと受け入れている人はかなり多そうですが、経済格差の拡大だなんて単なる奴隷化と言ってもよいのではないでしょうか。
特に上記の三か国は、経済というものをあまりにも重視しすぎて国民の幸福感が軽視されがちな傾向があるようにも思えますが、そうでない国の在り方もあるようです。
(とはいえ、それでも世界の貧しいとされている国の物質的欠乏も目にありまるものはありますが)
また、先日の「私たちの独立国?日本で「お金のいらない島」を作る運動が★」の記事のコメントで教えていただいたのですが、日本でもベーシックインカム制度の導入を実現させようとされている方も、各地にいらっしゃるようです。
「ベーシックインカム・実現を探る会」
http://bijp.net/
オランダの革新的な試みの経過が楽しみです。