2013.05.12 Sun posted at 16:58 JST
CNN.co.jp
http://www.cnn.co.jp/world/35031728-3.html
世界各地で農地の「争奪戦」が起こっている
(CNN)
世界銀行は毎年、土地と貧困に関する会議を開催しているが、今年4月に米ワシントンで行われた会合のテーマは土地管理の改善だった。開発途上国における不適切な農地管理が世界の安定を損なっており、世銀の資金もこれに拍車をかけているため、時宜を得たテーマだ。
近年、アジアやペルシャ湾岸の食料輸入国は食料価格の高騰や、国内での土地や水資源の不足を懸念して、国外で農地を取得している。欧米やアジアの民間投資家も、2015年までに300億ドルを農地に投資すると予測されており、投資額はさらに増える見込みだ。
主な投資対象のサハラ以南のアフリカや南アジアの貧しい国々では、土地の所有権は曖昧(あいまい)なものだ。そのため、資本を渇望する地元政府は、土地を安易に手放し、資金が豊富な投資家に驚くような便宜も提供している。たとえば、パキスタン政府は、同国陸軍の約6分の1に相当する10万人の警備部隊を提供したと報じられた。
その結果、信頼できる推計によると、2000年以降に取引された農地の広さは5000万ヘクタールで、これは英国とフランス、ドイツ、イタリアの全農地の半分を上回る規模となった。
投資家は、投資先の地域社会に対し、雇用や先進農業技術、食料の安定供給などを約束するが、ほとんど守られていない。最大の問題は、投資家の多くが輸出目的で作物を生産することだ。耕作の意思もない投資家が、投機目的で高価値の土地を取得することさえある。
このような農地取引は予想されるように、社会に動揺をもたらしている。
農地の「収奪」はアジアやアフリカで多いという
数年前には韓国の大宇がアフリカ南東部のインド洋に浮かぶ島国マダガスカルで耕作可能地の半分に当たる130万ヘクタールの賃借契約を結んだと報じられた。その後破棄されたこの契約は、大規模な抗議行動を呼び起こし、マダガスカル政府崩壊の一因となった。
大半の農地取得は、アジア・アフリカ諸国の、元々紛争が起きやすい地域で行われている。また、大規模な農地取得は、植民地主義や強奪の記憶を呼び覚まし大変危険だ。
外国人の農地取得が招いた衝突などは、これまではほぼ封じ込められている。だが、NPOの国際食料政策研究所(IFPRI)が発表した2012年版世界飢餓指数によれば、指数が最悪の諸国の内7カ国が農地の10%以上を外国人に譲渡している。
これらの国で飢餓が発生した時に、外国人による土地の取得や作物の生産、そして、(おそらくは警備兵に守られながらの)輸出が続けば、内戦を招きかねない。
地元政府は、土地の登記・所有権の確立などのための法律の整備や法律知識の普及を通じ、土地取引にかかわる紛争を防ぐべきだ。
農地を巡る争いによって社会が不安定化するとの懸念も
国際的NGOは地元民による土地の所有権取得を支援できるし、世界の報道機関も批判キャンペーンにより、強奪的な土地投資の抑制を働き掛けることが出来るだろう。
そして、国際的農地取引の多くに資金を提供している世銀は、地元への利益還元を融資の条件とすべきだ。先のワシントンでの会議は、世銀による前向きな影響力行使に希望を抱かせるものだった。
食糧需要や穀物価格の乱高下、人口増加や気候変動などの大きな問題は、農地不足に拍車をかける。農地への投資家が、より危険かつ暴力的な方法を採り、地域社会も、より暴力的に対抗するようになる可能性もある。
最初は金、次は石油、そして今度は貴重な土地をめぐる争奪戦が起きているのだが、世界の安定に対する警鐘も聞こえる。
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本記事は、米シンクタンク、ウィルソン・センターの研究員マイケル・クーゲルマン氏によるものです。記事における意見や見解は全てクーゲルマン氏個人のものです。
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